内容説明
いま、なぜ、アイヒマン裁判なのか。「国境なき医師団」元総裁とイスラエルの反体制映画作家が、ナチ戦犯アドルフ・アイヒマンの裁判記録を元に、現代社会における個人の責任と「市民的不服従」の意義を問う。長編ドキュメンタリー映画『スペシャリスト』理解にも必須の書。
目次
第1章 模範的な勤め人の昇進
第2章 記憶の役人たち
第3章 綱が絞首刑者を支えるごとく
第4章 真実とモンタージュ
映画『スペシャリスト』スクリプト
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NO MORE MR.NICE GUY
1
「ですから、私は心の底では責任があるとは感じていません」2014/07/12
ルナティック
1
ユダヤ人評議会についての言及は、とても興味深く読みました。たぶん、ここまで突っ込んだ議論、または疑問を示していることで、アイヒマン裁判と周囲の事柄について、ぐっと踏み込めるようにも思えた。2011/12/01
arkibito
1
普通の人間を殺戮者に変えるものは何か?問題はそこである。戦争という極めて特異な空気がそうさせるのか、あるいは組織に対する絶対的な服従心か。彼らは自分手を血で染めるどころか、殺人を犯しているという認識すらも欠如している。史上最悪の凶悪犯罪ですら、その自覚をマヒさせる、それだけ固着したシステムというものは恐怖なのだ。何らかの組織に属しながら生きる我々も他人事ではない。無意識のうちに組織に服従し思考停止した時、新たなアイヒマンが生まれる。2010/03/20
Arte
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アイヒマン裁判のドキュメンタリー『スペシャリスト』のスクリプトと作者による背景解説を合わせたもの。イスラエル建国時の移民の多くはヨーロッパ出身ではなく、建国後しばらくはホロコーストは黙殺されていて、ホロコーストの生き残りは抵抗しなかった&自ら移民もしなかった弱虫とみなされていたらしい。それがアイヒマン裁判の時にホロコーストに注目を集めようとして、アイヒマンは鉄道網の整備など輸送に力を注いでいたので実際の殺戮には直接関係ないにも関わらず、ホロコーストの証言者を集めて、見世物裁判的になった、と。2018/10/14