内容説明
科学論の人類学的転換!これまでの科学論は既にできあがった科学に関するものであった。ラトゥールは人類学的方法論で武装し、科学が今まさに作られている現場での科学者たちの後を追うことにより、生々しく刺激的かつ斬新な科学の姿を明らかにする。
目次
序章 パンドラのブラックボックスを開く
第1部 弱いレトリックから強いレトリックへ(文献;実験室)
第2部 弱い点から強い要塞へ(機械;インサイダーズ・アウト)
第3部 短いネットワークから長いネットワークへ(理性の法廷;計算の中心)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
7
著者の「非還元」なる考えによれば、どんなものも還元可能でも不可能でもない。つまり固定はできないが、仮のものとして扱えば対象化はある程度可能となる。人類学的観点を微生物の観察に二重移しする著者の描く世界は、強い要素や弱い点、長いまたは短いネットワークのような力の強弱や一定の持続をしながら、不均質で多様な行為者相互が連関し変容し続けている(アクターネットワーク)。本書ではこの世界に科学技術を置き、実験室、科学者、概念、機械等による変動するネットワークとして対象化し、6つの「原理」を通して構築的に捉え直される。2024/06/24
au-lab
1
まさに「人類学的」考察であるが故に、前半部分は時に主張の核心がみえずらく、読みやすさに反して読み解きにくかったが、後半のアクターネットワーク的な考察に進むにしたがい、全体像が見えてきた。社会構成主義ではないと主張しているものの、実質的には社会構成主義と極めて近い立場であり、科学的「事実」の認定がネットワークに依存していることを描き出す視点は、素朴な「自然科学」観を見事に打ち砕く。ネットワークという「分析可能」な概念装置の可能性を切り開いた研究としても重要。2016/08/11
生きることが苦手なフレンズ
1
必要に迫られて読みましたが、人や物を組み込んでゆく「機械」の考察や「規模の問題」などドキドキしながら読めてビックリです。しかし日本語版への序文で火消しをしておきながら、本文はやっぱり燃料投下してた感。2014/02/21
★★★★★
1
アクター・ネットワークの考え方をもとに、科学がいかにして構築されていくかを考察する論文。ヒト・非ヒトの同盟を通じて一言説が真実性を獲得していくメカニズムが、人類学的な観察によって明らかにされてゆきます。読みかけのまま渡航してしまったので、前半部をだいぶ忘れてしまったよ。大変重要な一冊だと感じました。しかしながらまだ充分に咀嚼しきれていないので、今のところこの程度の表面的な理解です。2010/09/30