出版社内容情報
アフォーダンスの創始者であるギブソン最後の著作。専門書ではあるが、図を多く入れたり、囲み記事で注釈を加えたりするなど、一般読者も意識して書いている。大半を占めるデカルト派を向こうに回しての論陣。難解ではあるが、読み解くうちに戦意が伝わってくる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
5
空間を光で捉えれば媒質(固体・液体・気体)と界面から成る。物質は現象となり、世界は生物の周りに形成される包囲光からなる環境世界となる。第二次大戦時陸軍航空部でパイロットの認知心理の研究を行った著者は、世界をこう抽象し、質量中心の近代認識論の固定された世界観に対して、速度の中の世界を仮説する。物質-主体間に知覚を置いて知識や推論を先行させる近代的空間に対し、生物と環境から成る生態では情報は直接知覚に与えられる(アフォーダンス)。彼の生態光学は脳科学でニューロンの計算論レベルで再検討されつつある(D・マー)。2017/09/18
Haruki
4
ヒトの知覚の考え方を動的、相互作用的に捉え価値転換をもたらしたギブソンの遺作。視覚を代表として、環境の包囲光の中にいる主体が静止画ではなく動的な空間の中で肌理や遮蔽を読み取ると見る。より意味あるものとして移動の中での定位を探索し、アフォーダンスの知覚や不変項を読み取る構造、意図の側面を強調する。視覚に限らない感覚の情報抽出という側面を強調し、光学、認知科学、絵画・写真・映像の視覚的体験など、横断的な分野において複層的な理解へのヒントを与える。職人やプロの熟練者におけるリズミカルな全身運動にもヒントになる。2023/06/14
やまもと
4
入門を経ることにする。2018/06/30
つゆき
1
アフォーダンスという概念は魅力的だけれど、直接知覚というギブソンの特異な知覚の捉え方のためにどうも話がややこしくなっているように思える。2011/07/27
ゲニウスロキ皇子
1
やたらとビジネス書に引っ張られる書物という印象。個人的には面白かった。生物が行動するためには、環境から様々な支えがなければならない。我々は環境から支えられなければ、転ぶことさえ許されないのだ!そしてアフォーダンスとは、環境にある生物の様々な行為を引き出す「可能性」(必然ではない)に他ならない。すべてを可能性から必然へと引き上げようとするビジネス書で語られているほど押しつけがましいものではないのだ。2011/05/06