出版社内容情報
渡辺豪[ワタナベゴウ]
監修
内容説明
売春防止法によって“その街”が消えて60年余。そこに生きる娼婦と買う男、取り巻く街・時代を見つめる作品群。文芸、ルポ・報道、紀行、対談、詩歌、マンガ、歌謡曲…多様な執筆陣・クリエイターらによる単行本未収録を含む貴重な26篇を収録。
目次
小説 驟雨(吉行淳之介)
小説 抹香町(川崎長太郎)
対談 灯火は消えても(川崎長太郎×吉行淳之介)
報道写真にみる赤線
ルポ 「赤線地帯」のセットで(濱本浩)
エッセイ 赤いガラス玉(高倉健)
小説 娼婦焼身(野坂昭如)
小説 曙町(田中英光)
ルポ 赤線風流抄(舟橋聖一)
ルポ 消えたオチヨロ船(井伏鱒二)〔ほか〕
著者等紹介
渡辺豪[ワタナベゴウ]
遊廓家・カストリ出版代表。戦後の売春史が主テーマ。遊廓跡・赤線跡を全国およそ500箇所にわたって撮影。2015年、遊廓専門の出版社「カストリ出版」を創業、主に遊廓関連の復刻を行う。翌16年、吉原遊廓跡に遊廓専門の書店「カストリ書房」を開店(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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fwhd8325
52
赤線を経験したと、自慢げに語る大人たちもいなくなってしまった。勝手な思い込みだが、そこは桃源郷のようでもあり魑魅魍魎の世界でもあるように思っている。そして、人間の哀しみの坩堝のように。年齢だけ大人になっても、そこを経験していない自分は、どこか半端物のように感じていたこともあった。様々な形式で綴られた赤線。やっぱり哀しい、そして夢のようにも感じる。2020/12/03
hitotak
10
赤線を舞台にした小説、ルポルタージュ等のアンソロジー。基本的に赤線が存在している当時に書かれた作品群のため、非常な生々しさを感じる。遊郭での遊びのシステム(料金、女性と店の取り分、持ち時間や客がバッティングした場合の対処法など)がわかり、記録本としても貴重。とはいえ書き手の殆どは利用者側の男性のため、実際に娼婦として働いていた女性の内面や、赤線で働く本当の理由まではわからない。各地の赤線の写真も掲載され、興味深い。当時赤線を取材していたような実話系出版社は軒並み潰れたためフィルムもほぼ残っていないそうだ。2021/06/24
かみいゆ
6
これはお得。永久保存版として持っておきたいお宝本。ジャンルの垣根を超えたアンソロ本で、小説からエッセイ、歌詞に漫画に至るまで赤線時代、いわゆる線中、線前に絞って編んだ贅沢な一冊。特にお気に入りは野坂昭如と田村泰次郎。ちあきなおみの「ねえあんた」も本著で知り拝聴したが壮絶な名曲だった。きっと繰り返し聴き続けると思う。たった12年間存在した赤線時代。いまとなっては歴史に葬られ空白となった時代、たしかに存在した娼婦たちの悲喜交々に思いを馳せる。2021/05/30
yuko0611
3
今月、橋本遊郭跡を見に行ってきたので、赤線が舞台の小説が読みたくなって検索したら、そのものずばりの本があって驚いた。「はじめに」を読んで編者の渡辺豪さんの姿勢に共鳴して最初から読み通したが、そうでなければ投げ出していたような内容の小説やルポもあった。時代の記録として読んだが、当時の漫画には唖然とさせられた。ろくでもない男性が出てきても川崎長太郎などはもっと読みたくなったし、自分でも何が違うのか不思議。井伏鱒二と野坂昭如のルポも良かった。芝木好子も。一番心に残ったのは娼婦の書いた詩。2024/10/30
rey
3
娼妓に経緯を尋ねたり、恋愛の幻想を抱いたりする男の多いこと。今ほどドライではなかった分、まだ幾つかのドラマはあったのかもしれない。 2022/05/04