出版社内容情報
阿部珠樹[アベタマキ]
著・文・その他
和合亮一[ワゴウリョウイチ]
解説
内容説明
2011年3月11日、南相馬のある初老の男(菅野長八)を襲った巨大地震と大津波。家族の消息を探し回る中で、自身が見つけた泥の中の一台の見覚えのある車。それが娘の遺体だった。そして、原発爆発。菅野は身を切られる思いで、新潟行きの避難バスに乗った。南相馬に戻ると娘の遺体はすでに荼毘にふされていた。同時に妻も亡くした。未だ母と息子は見つかっていない。―親族12人を失った男は、何度も死を想った。それでもなお、男は今年も野馬追に出陣しつづける。亡くした家族の供養のために。伝統と人馬一体の此の地の暮らしを守るために。そして、馬を愛するがゆえに。男をそこまで惹きつける野馬追の魅力とは何か。単なる伝統行事の戦国絵巻を越えた、その土地に生きる人間の本能と気概に迫った傑作ノンフィクション!
目次
第1章 南相馬が呼ぶ声
第2章 二〇一一年三月十一日と菅野長八
第3章 千年の歴史と伝統、人馬一体の暮らし
第4章 鎮魂と「野馬追人」
第5章 南相馬を生きる
第6章 野馬追を生きる
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
17
2011年においても、途切れず開催された伝統行事(015頁)。奇跡的である。旗指物を背負った甲冑姿の騎馬武者が馬を操りながら鞭で神旗をからめとろうと競い合う様子は、戦場で手柄を上げようと奮闘する戦国時代の武者姿を彷彿させる(027頁)。大事故を起し、今も収束の気配がない福島第一原発はともに野馬追に参加している双葉町と大熊町にまたがって建設(083頁)。が、多くの方々がが犠牲となったからこそ、中止することなく実施する凄さ。 御嶽噴火では、ことごとく、イベント中止の木曽地域とは全く異なるバイタリティを感じた。2014/10/25
kj54
2
ジャケ写が素晴らしい。 3.11後の「相馬野馬追」について、ある家族にフォーカスした本。 子供のころ「相馬の馬追い」と“の”が助詞だと勘違いしていたのを父親に直されことをなぜか思いだす。 いろいろ思うところはあるが、まとめられない。2020/09/07
らいしょらいしょ
2
あの地震、被災した人のリアルな状況が少しだけわかる。そして、テレビニュースでちらっと知るぐらいでしかなかった、相馬の野馬追。まったくの持ち出しで、震災の年でさえも途絶えることなく続けてきた、「神事」。馬と触れ合うことで立っていられるなら、それほどの”柱”をうばえるものではない。もう少し、野馬追を追いかけてみようと思う。2017/07/03