内容説明
深海の底で、天空の彼方で、宇宙の岸辺で、繰り広げられる魂の躍動、沈黙の劇。
目次
輾転反側する〓たちへの挽歌のために
まずは斬首された蛸が用意されるべきであろう
慟哭に沈潜する深海魚の群れに一条の光がさして
海溝はおのれの内なる深淵の詭計に耐ええずに
狂い咲きのサンゴを沈黙の岸辺に投げつける
析出し続ける半島の白亜紀になずむ堆積から
喪われた時の骨格がしずかに浮き上がる
両側にかしずく白鳥の翼をもつ双生児たち
その影に怯える夥しい魚卵の鮮明な痕跡は
瀝青の内部に隠された生命進化の遍歴譚に〔ほか〕
著者等紹介
高柳誠[タカヤナギマコト]
1950年、愛知県名古屋市生れ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆう
8
溜息がでるほどうっとりする世界ではあるのだけど、美しさだけでなく、言葉の重さやリズム、独自の世界観に酔ってもいたのかもしれない。詩というのは現実を写すのではなく、心に映るものを書くことなのだろう。日常に擦り切れた心では詩的に物を見ることが難しい。詩はそれを助けてくれる。著者曰く、試みとして行間を語ってみたらしい。著者の考える行間は豊かで、私は気付かずに通り過ぎてばかりだった。丁寧に読まれた行間の行間さえ、私には読みとれているのか。言葉だけではなく、行間を読む。想像力を羽ばたかせて詩の海に浸る。大切ですね。2023/04/23