出版社内容情報
◆第一句集
俳句という表現形態は、沈んだ気分を、うまく和らげながら詩的なことばにすくいあげてくれる。それは、俳…◆第一句集
俳句という表現形態は、沈んだ気分を、うまく和らげながら詩的なことばにすくいあげてくれる。それは、俳句が人の織りなす事柄をアニミズム的自然の表象のなかへと包み込んでくれるからだろう。とくに季語の働きとしてそれを実感した。それにしても日本の自然は優しい。この優しさがなければ、私は俳句を作り続けることはできなかった。俳句はこの自然の優しさ(日本人がそのように認識してきたということだが)に支えられた詩形だとつくづく思う。
(著者)
◆自選十句
一声に悔恨込めし寒烏
頬被りて行く朝犬が見ている
たくましく瓦礫の猫に初時雨
三月や産土の地の底割れる
六月やサンチョ・パンサと立ち往生
邯鄲しずまり山姥降りてくる
蝸牛宇宙の際で思案せり
初紅葉生き急ぐ葉から染まりゆく
雪女郎子どもらと遊ぶ溶けるまで
朝寒し孤族の国で顔洗う
岡部隆志[オカベタカシ]
著・文・その他
目次
犬が見ている
春の崩壊
山姥降りてくる
いつも先に咲く
誰もいない地球
薄氷を踏んで
超然たる芋虫
五月の教室
森の孤独
孤族の国
著者等紹介
岡部隆志[オカベタカシ]
1949年生まれ。共立女子短期大学文科教授。日本古代文学、近現代文学、民俗学を専門とするが、1997年から中国雲南省の少数民族文化調査に赴く。他に現代短歌評論も手がける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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