出版社内容情報
◆第一句集
わが雛を盗る纏足女つどひ来て
恐ろしい。胸苦しい。声が出るような悪夢である。この世…◆第一句集
わが雛を盗る纏足女つどひ来て
恐ろしい。胸苦しい。声が出るような悪夢である。この世のこととは思われない。しかし、これは敗戦後の旧満州で地子さんが、実際に経験したこと。もし地子さんが記録しなければ、無かったことになってしまう。そこに地子さんが、どうしても書きつけなければならない、一巻にまとめなければならない理由があった。このように切実な俳句が、他にいったいどこにあろう。歴史をものがたる貴重な記録であると同時に、人間を描いた俳句、その極限とも言うべき句群である。
(帯より・小澤實)
◆自選十五句より
大地より賜るわが名雪割草
陽炎や父を探して遠き国
身の内に金鈴一つ春の闇
花屑や馬の跫音近づきぬ
東京廃墟百日紅のみ輝ける
死蝉の片羽懸かる蝉の穴
十薬や精神棟の鉄格子
汗の粒目にしみ麒麟傾ぎたる
どこからか産声のして広島忌
隠るるやわれ失禁の高粱畑
? 一九九三年―二〇〇一年
海底 7
? 二〇〇二年―二〇一六年
大地 ? ? ? 29
東京廃墟 67
父祖の国 83
死者の書 103
跫音 125
蛇体質 145
鍵の束 167
結晶 187
跋・押野 裕
あとがき
前田 地子[マエダ クニコ]
一九四〇年 満洲新京に生まれる
一九四五年 満洲吉林へ
一九四六年 引揚げ
一九五六年 抑留中の父に面会のため家族で中国撫順収容所へ渡航
一九九二年 日中友好太極拳交流演舞のため渡中・北京
一九九三年 三橋敏雄句会葉月会、檣句会入会
一九九七年 体験記『飛びゆく雲』(揺籃社)上梓
二〇〇二年 八王子NHK俳句入門講座にて俳句入門、澤入会、小澤實に師事
「澤」同人 俳人協会会員
受賞歴
一九九六年・一九九七年・一九九九年 西東三鬼賞佳作入賞
二〇〇〇年 夢二俳句伊香保観光協会会長賞
二〇〇八年 澤 特別作品一五句「金の針」入賞
目次
1 一九九三年‐二〇〇一年(海底)
2 二〇〇二年‐二〇一六年(大地;東京廃墟;父祖の国;死者の書;跫音;蛇体質;鍵の束;結晶)