内容説明
新しき明日の来るを信ずといふ自分の言葉に嘘はなけれど―『悲しき玩具』に収めた著名なこの歌の第三行末の「―」は、啄木の明らかな逡巡を示していた。啄木研究者や、短歌解説者の多くは、前行の思想を否定し、「―」の部分に絶望を見出した。しかし、啄木の「―」はそうではなかった。啄木は、死の三月前、一月三日の日記に「国民が、団結すれば勝つといふ事、多数は力なりといふ事」と記し、それを解いてみせた。「―」は、「連帯」探求の旗印だったのである。
目次
第1部 石川啄木と「工場法」(小樽から釧路へ―社会主義への無関心の呪縛をといて;砲兵工廠の煙の認識と発展;「百回通信」にみる「工場法案」と議会(その1)
「泣いてやりしかな」考1
「赤旗事件」と啄木の反応 ほか)
第2部 石川啄木とストライキ(啄木における第一のストライキ;時代を負った言葉;「ひそかに淋し」考;啄木における第二のストライキ;二つのストライキをめぐって ほか)
著者等紹介
碓田のぼる[ウスダノボル]
1928年生まれ。歌人。渡辺順三に師事。新日本歌人協会代表幹事など歴任。国際啄木学会、日本民主主義文学会会員。主な歌集に『花どき』で第十回多喜二・百合子賞受賞(1978年)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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