内容説明
児童文学に描かれた“子ども”像を探る「敗者としての子どもたち」、読書は心を豊かにするかと問う講演「本を読むこと、壊されること」。『トムは真夜中の庭で』の作者フィリッパ・ピアスへのインタビューや、「ゲド戦記」や乙骨淑子をめぐる鶴見俊輔との対話。「ゲド」の作者アーシュラ・K.ル=グウィンへの追悼文も収録。『本の虫ではないのだけれど』『不器用な日々』に続く第3集。
目次
1(本を読むこと、壊されること“講演”)
2(本のある小部屋;敗者としての子どもたち―『夜が明けるまで』が提起するもの ほか)
3(キングズ・ミル・レイン四番地で;ピアスさんの思い出“特別寄稿”(菅沼純一) ほか)
4(別の時、別の場所;『洟をたらした神』文庫版解説 ほか)
5(問いを受けついで 対話:鶴見俊輔さんと;アーシュラ・K・ル=グウィン追悼)
著者等紹介
清水眞砂子[シミズマサコ]
1941年、北朝鮮に生まれる。児童文学者・翻訳家。2010年3月まで青山学院女子短期大学専任教員。おもな著作に、『子どもの本のまなざし』(洋泉社、日本児童文学者協会賞受賞)など。訳書に、アーシュラ・K・ル=グウィン「ゲド戦記」(全6巻、日本翻訳文化賞受賞)ほか多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シュシュ
25
面白かった。鈍重に見える教え子から多くのことを教えてもらい、その不器用さをいとおしく思っていたという著者。印象的だった言葉-批判なき真面目さは悪をなす。学校は本来、百点が取れなくても、いくらでも生きていく可能性はあると伝え示す場所。フィリパ・ピアスとの対談より-人はものを考えないほうが戦争をするには好都合。平凡に見える子どものほとんどがどんなにすばらしい力をかくしもっているか。すぐれた文学は人間の暮らしが違って見えるような高みを与えてくれる。鶴見俊輔との対談も貴重。乙骨淑子、吉野せいの本を読みたくなった。2018/08/24
Yuko
13
<読書は心を豊かにするかと問う講演「本を読むこと、壊されること」をはじめ、児童文学に描かれた“子ども”像を探る「敗者としての子どもたち」、フィリッパ・ピアスへのインタビュー、鶴見俊輔との対話などを収録> 2018年 ゲド戦記の訳者。非常に示唆に富む記述多数。日常を生きのびること、それこそがドラマであり、平和を生きのびることを可能にする精神だという。乙骨淑子を読まねば! 2020/07/25
slowpass
8
鶴見俊輔との対談もフィリッパ・ピアスとの対談も本当に素晴らしく宝が詰め込まれたような一冊。買おうと思ったがもう絶版で古本も見当たらず・・・。特に前者の対談では歴史の織り成されぶりに驚くばかり。自分以外皆殺しにされたナヤ族の生き残りイシとル=グウィン家族との出会い、白人の罪と責任に煩悶する人類学者の父、父の死後『イシ』としてメモを出版する母、沈黙によってイシの「時間」はル=グィンに伝わり、それがまた高校教師をしていた清水眞砂子さんに伝わっていく。清水さんはこの本を納得する水準で訳せるならと高校教師を辞める。2023/03/04
ウルトラマンエースの母
7
知人に面白いよと勧められて。 シュシュさんと同じく、胸に響く言葉がー批判なき真面目さは悪をなす。学校は本来、百点が取れなくても、いくらでも生きていく可能性はあると伝え示す場所。フィリパ・ピアスとの対談より-人はものを考えないほうが戦争をするには好都合。 ゲド戦記…もう一度じっくり読み返してみよう。 乙骨淑子さん、吉野せいさんの本も是非読んでみたい。 日常を散策するⅢーとなっているから1と2も読まなきゃ。2018/12/27
みけのすずね
6
ゲド戦記訳者、清水眞砂子さんの思索文三冊め。この消費社会にあって、私は能うかぎりの他者を内に抱え、日々与えられるささやかな喜びと共に、深く悲しみを知る人でありたいと願っている。安心して真面目になれる人。フィリッパ・ピアスとの対談。よく考えなさい。時は堆積する。詩的な時間と日常の時間。両方の時間を行き来して、両方の時間を同時に抱きしめる。愛を通して受け入れる。絆は1本から2本、3本となり今やかなりの本数になって、しかもよりがかかり1本切れたくらいではどちらも不安になどならない。2020/05/14