内容説明
妊娠、月経、ハラスメント、トランスジェンダー、カミングアウト、人種差別、障害、老い…。ボーヴォワールらの哲学を拡張しつつ、当事者の経験の記述から「当たり前」の問い直しを試みる。
目次
1 フェミニスト現象学の始まり(フェミニスト現象学とは何か?―基本的な視点と意義;女の子らしい身振りとは何か?―身振りについてのフェミニスト現象学;妊娠とは、お腹が大きくなることなのだろうか?―妊娠のフェミニスト現象学;なぜ月経を隠さなくてはいけないのだろうか?―月経のフェミニスト現象学;外見を気にしてはいけないのか?―ボディ・イメージと雰囲気のフェミニスト現象学;どこまでがセクシュアル・ハラスメント?―ジェンダー視点の重要性;一人暮らししなければ一人前じゃないのか?―“家に住むこと”のフェミニスト現象学)
2 フェミニスト現象学の拡がり(なぜ今、フェミニスト現象学なのか?―展開と挑戦;なぜ自分のセクシュアリティを口に出すのか?―経験からのセクシュアリティ再考;「性別違和」とは何か?―トランスジェンダー現象学の導入に向けて;男だってつらい?―男らしさと男性身体のフェミニスト現象学;人種は存在するのか?―差別に対するフェミニスト現象学的アプローチ;障害はどのような経験なのか?―生きづらさのフェミニスト現象学;年を取ることと、老いることは同じなのか?―フェミニスト現象学の視点から考える老い)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Olive
7
          
            現象学の方法論をベースに女性人生の経験や出来事(例えば月経、外見、加齢等)を考察する。 メルロ・ポンティは人間の存在は偶然のなかから選び、決断の繰り返しによって形づくられるとした。人間一般のとらえ方に対し、ボーヴォワールは女性の存在へと敷衍する。 ジェンダー規範や構造は経験の外ではなく、日常経験を通し具体的に現れる。肌身で感じる苦悩や不安や期待として。現象学はこうした言い難い気持ちに直接アプローチする。開かれつつある研究らしい。 2021/11/28
          
        みき
6
          
            世界の中にある個人の経験の生々しさで描かれるフェミニスト現象学は、前半は当事者意識がうなるように湧き上がってきて読むのが辛かった。ボーヴォワールもひどいことを言う。「人は女に生まれるのではなく女になるのだ」なんて、知っていたけど、キツイこと言わないでよって思う。面白かったけど気持ちが揺れて読むのが大変だった。2025/10/31
          
        カモメ
5
          
            フェミニスト現象学は生きられた経験から出発し反自然主義、反本質主義を基礎とする。マイノリティの分断やマジョリティとマイノリティの二項対立を批判する。様々な事象がある中で、トランスジェンダーに関しての記述が興味深い。従来トランスジェンダー当事者の性別違和は第三者から見た身体を基準とされていた。ここでは当事者の違和感が「幻影肢」に準えて説明されており、「ジェンダー・アイデンティティ」ではなく「身体イメージ」を用い、精神的な混乱ではなく物質的な身体こそが間違ったものとした。性自認という表現を考え直していきたい。2021/04/26
          
        Bevel
5
          
            これから運動を起こす本なのか、それとも既存の運動をまとめる教科書なのかがちぐはぐでぼんやりした本という印象。他のアプローチに対して現象学的なアプローチをとる意義や、現象学的手法の導入についての歴史が普通にちゃんと欲しかった。藤高、稲原論考はそういう配慮があってよかったし、宮原、佐藤論考も参考になってよかったのだけど。あと、フェミニスト現象学の観点から人種、障碍者、老い一般を論じるというスタンスがよくわからない。「入門」だからといって短縮しすぎかなと思った。2020/12/21
          
        Ayana
4
          
            自分の経験をベースに社会を見ることって意外とできてない。言葉や規範に捉われずに、自分の経験から社会を見て自分の素直な言葉で記述する。フェミニズムだけでなく色んな分野に通じることだ。規範に雁字搦めになりがちな社会で、ひとつ前に進むためには良い機会となる本だった。2023/01/20
          
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