出版社内容情報
オセアニア島嶼部における移民・「混血」,性・障害などの民族誌事例を提示し,現代世界における人類学的な共生の論理を追究する。
はじめに
序 章 現代世界における排除と共生(風間計博)
1 問題の所在
2 排他と攻撃性
3 エスニシティと排他性
4 マイノリティの存在証明
5 オセアニア島嶼部における在地の論理と共生
6 本書を構成する諸論文の概略
第?部 移動する人間と「混血」
第1章 鯨歯を纏い,豚を屠る
フィジーにおけるヴァヌアツ系フィジー人の自己形成の視点からみた共存(丹羽典生)
1 はじめに
2 ヴァヌアツ人のフィジーへの定着
3 ヴァヌアツ系としての自己形成
4 複合的な自己の形成
5 最 後 に
第2章 「その他」の人々の行き交う土地
フィジー首都近郊に生成する「パシフィック人」の共存(風間計博)
1 はじめに
2 「その他」の人々
3 スヴァ在住のキリバス系住民
4 オールド・カマーのヴェイサリ地区住民
5 ヴェイサリを行き交う人々
6 ネットワークの結節点としてのフリーホールド地
7 おわりに
第3章 ニュージーランド・マオリの「混血」をめぐる言説と実態(深山直子)
1 はじめに
2 マオリの「混血」の概史
3 国勢調査における「混血」マオリの可視化
4 現代におけるマオリ・アイデンティティを巡る言説
5 フィールドワークから考えるマオリ・アイデンティティ
6 おわりに
第4章 ヤップ離島社会の共生戦略におけるアイデンティティとネットワーク(柄木田康之)
1 はじめに
2 サウェイ交易ネットワーク,公共貨幣経済,二元的州政府
3 民主化と首長会議の形成
4 公務員の離島アイデンティティ
5 ヤップ本島におけるコミュニティ用地獲得戦略
6 葬儀における公務員アソシエーションと交易パートナー
7 む す び
第?部 新たなマイノリティの生成:性・高齢者・障害
第5章 マフとラエラエの可視化と不可視化
フランス領ポリネシアにおける多様な性の共生(桑原牧子)
1 序 論
2 性の名づけとマイノリティ化
3 タヒチ島とボラボラ島の性カテゴリーの多様化
4 タヒチ島とボラボラ島のマフ,ラエラエ,レズビエンヌ
5 考 察
6 結 論
第6章 母系社会・パラオにおけるマイノリティは誰か?(安井眞奈美)
1 ローカルな社会における「男女平等」というグローバルな基準
2 母系社会・パラオの概観
3 ベラウ女性会議の20 年
4 ベラウ女性会議のさまざまな評価
5 シューカンを担うパラオ女性の現状
6 結 語
第7章 高齢者の包摂とみえない異化
ヴァヌアツ・アネイチュム島における観光業とカヴァ飲み慣行(福井栄二郎)
1 高齢者とマイノリティ
2 ヴァヌアツ・アネイチュム島の観光業
3 平等とみえない異化
4 ま と め
第8章 「障害」をめぐる共存のかたち
サモア社会における障害支援NGO ロト・タウマファイによる早期介入プログラムの事例から(倉田 誠)
1 はじめに
2 サモア社会における障害者支援の展開
3 サモア社会における能力観
4 ロト・タウマファイによる早期介入プログラムの実践
5 おわりに
第?部 差異をめぐる記憶と感情
第9章 帝国の記憶を通した共生
ミクロネシアにおける沖縄人の慰霊活動から(飯?伸五)
1 はじめに
2 沖縄人とミクロネシア人の邂逅
3 戦後の慰霊活動
4 帝国の記憶を通じた共生
5 おわりに
第10章 狂気に突き動かされる社会
ニューギニア高地エンガ州における交換と「賭けられた生」(深川宏樹)
1 序 論
2 狂気の民俗理論
3 狂気と呪い
4 結 論:狂気に突き動かされる社会
風間 計博[カザマ カズヒロ]
京都大学大学院人間・環境学研究科教授博士(文学)専門:人類学,オセアニア社会研究主要著書・論文:『 窮乏の民族誌―中部太平洋・キリバス南部環礁の社会生活』大学教育出版(2003),『共在の論理と倫理―家族・民・まなざしの人類学』[共編]はる書房(2012),『オセアニア学』京都大学学術出版会[共編](2009),「序 現代世界における人類学的共生の探究」『文化人類学』81 巻3 号(2016)
内容説明
オセアニア島嶼部における移民・「混血」、性・障害、記憶・感情の民族誌事例を提示しながら、錯綜した現代世界における、人類学的な共生の論理を追究する。
目次
現代世界における排除と共生
第1部 移動する人間と「混血」(鯨歯を纏い、豚を屠る―フィジーにおけるヴァヌアツ系フィジー人の自己形成の視点からみた共存;「その他」の人々の行き交う土地―フィジー首都近郊に生成する「パシフィック人」の共存;ニュージーランド・マオリの「混血」をめぐる言説と実態;ヤップ離島社会の共生戦略におけるアイデンティティとネットワーク)
第2部 新たなマイノリティの生成:性・高齢者・障害(マフとラエラエの可視化と不可視化―フランス領ポリネシアにおける多様な性の共生;母系社会・パラオにおけるマイノリティは誰か?;高齢者の包摂とみえない異化―ヴァヌアツ・アネイチュム島における観光業とカヴァ飲み慣行;「障害」をめぐる共存のかたち―サモア社会における障害支援NGOロト・タウマファイによる早期介入プログラムの事例から)
第3部 差異をめぐる記憶と感情(帝国の記憶を通した共生―ミクロネシアにおける沖縄人の慰霊活動から;狂気に突き動かされる社会―ニューギニア高地エンガ州における交換と「賭けられた生」)
著者等紹介
風間計博[カザマカズヒロ]
京都大学大学院人間・環境学研究科教授。博士(文学)。専門は人類学、オセアニア社会研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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