内容説明
生産と組織のフレキシブル化、金融化の進行、労働として動員される「生」。1960‐70年代以降の激動がもたらしたポスト・フォーディズムは、非物質的なものをめぐって旋回する―現代のグローバルな趨勢「認知資本主義」を、様々な事例を取り上げ、政治経済学的な視角から分析。
目次
第1章 認知資本主義―マクロレジームとしての特徴と不安定性
第2章 労働のゆくえ―非物質的労働の概念をめぐる諸問題
第3章 認知資本主義と創造都市の台頭
第4章 コモンにおける真正性の試験と評価―テロワール・ワインと有機農産物を事例に
第5章 企業と動態能力―日本企業の多様性分析に向けて
第6章 コーチングという装置―認知資本主義における労務管理?
第7章 クリエイターの労働と新しい地域コミュニテイ
第8章 ドイツの労働組合による組織化戦術の新展開
第9章 「継続的本源的蓄積」としての研究開発―ネオコロニアリズムと研究者のプレカリアート化の関係について
第10章 認知資本主義と統治―貨幣が国家から離れるとき
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Mc6ρ助
4
読書子には少しく難しすぎる嫌いはあるが、新自由主義台頭の背景に、単に物やサービスだけでなく知識やらなにやらを生産・消費する『認知資本主義』の進展があると。人口に膾炙するにはもう少し時間がかかりそうだが、それが例えばバイオパイラシー、『ある植物の汁・・傷のなおりも早い、といった伝統知識が長く知られている場合、それの成分を分析し、必要成分を分離して・・工業化の最終段階を開発したものだけにすべての権利が認められる(p234)』などになにがしかのアンチテーゼを提示できることを期待できるならありがたいことだと思う。2016/08/07
センケイ (線形)
0
超面白そうだけど何のことかサッパリ分からない魅惑のタイトル、しかし読めば読むほど、この言葉ほど混沌とした今を表現するのにうってつけのワードは無ないだろう、と思えてくる。具体的には、生そのもの、知識そのものが流通し共有される、現代の価値について明らかにしていく話だ。基本的には経済の話だと思うが、カバーする社会問題の話題の広さに心が躍る。アニメ業界などでの、言葉にしにくい暗黙の知識や能力の役割、都市の既存コミュニティの行き詰まりや新しいコミュニティのあり方、大学の雇用の崩壊が第三世界の農家から搾取する構造等。2017/03/31