内容説明
白いドレスに身を包んで隠遁生活を送り、無名のままこの世を去ったひとりの女性。しかし、その死後に遺品のなかから発見された約一八〇〇篇もの詩群により、彼女はアメリカを代表する詩人と評価されるに至った。その名はエミリ・ディキンスン。唯一無二の詩はいかに生み出されたのか。その生涯と詩を、彼女の生きた時代と文化から考える。
目次
第1章 ある詩人の一生
第2章 孤独のなかで
第3章 戦争と恋
第4章 「エミリ・ディキンスン」を創った人
第5章 孤高の詩、その手強さ
著者等紹介
大西直樹[オオニシナオキ]
国際基督教大学(ICU)教養学部およびAmherst College卒。ICU比較文化研究科博士後期課程満期退学、学術博士。ICU教養学部教授(アメリカ文学・アメリカ学)として教鞭を執り、現在、特任教授。アメリカ学会監事、日本エミリィ・ディキンスン学会会長、初期アメリカ学会会長など歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かふ
16
ディキンスンの評伝なのだが、著者がアマースト大学出身(ディキンスンの父が経営)で「日本エミリ・ディキンスン協会」の会長でもあるのでかなり詳しい。アマーストという土地がピューリタン的であり「自由と伝統」をモットとするような、その思想は同志社大学やクラーク(「(青年よ、大志を抱け」)の教育にもみられ、ディキンスンが宗教的でありながら個人の自由に強く拘ったのは父の影響かと思う。但し、ディキンスンの時代は男尊女卑も激しく家父長制が強かったので、世間とは相容れなかった詩が現在注目されたのだという。2025/01/23
れどれ
4
あくまで、彼女の詩ではなく彼女自身を読むための本であると見なさねばならない。彼女の詩の訳がどれだけ困難であるか本文中に示されてもいたが、それにしても、訳された語句には霊感がすっぽり抜け落ちている。彼女の故郷であるアーマストの成り立ちなどについての記述はたしかに面白い。しかしすぐに話が脱線し、著者の専門分野との接続を計る牽強付会が否めない。とはいえエミリへの執心には謹直な心構えを感じる。別の出典から彼女の詩の神妙にひとしきり浸ったのちこの本を読むなら十分ファン心理は満たしてくれる。2018/10/28
サフィール
1
小説や映画に度々出てくる彼女の詩。惹かれるものも多く人物像が気になっていたので手に取ってみた。作り上げられたエミリー像を鵜呑みにしていたこともあってとても興味深かった。彼女について書かれた他の本も探してみたい。
akoyagai
1
「…彼女の詩に触発された新たな芸術作品が創り出されている…」とのこと。まさに私がディキンスンを知ったのは音楽から。radiofranceでたまたま耳にしたDominique Vasseurという作曲家の曲のCD(I dwell in possibility)をフランスから取り寄せたのがきっかけでした。読んでよかった。色々と興味深かった。2017/09/22