内容説明
これは遠いよその国の話、と思うなかれ!かわいいチェコ?ロマンティックなプラハ?いえいえ、美しい街にはおぞましい毒がある。宗教をめぐり、民族をめぐり、イデオロギーをめぐり、人間は、国は、かくも非人間的になれるものなのか。中欧の都に、人間というこの狂った者の1000年を見る。
目次
中世の幻 プラハ1
同化と対立 プラハ2
さまよえる街 プラハ3
光と影 クトナー・ホラ
死の街 チェスキー・クルムロフ
要塞と刑務所とゲットーと テレジーン
消された村 リディツェ
未来都市 ズリーン
著者等紹介
増田幸弘[マスダユキヒロ]
1963年東京生まれ。フリー編集者・記者。早稲田大学第一文学部卒業。スロヴァキアを拠点に、日本とヨーロッパを行き来して取材をおこなう(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
142
著者はフリーの記者。歴史学者でない独自の視点。2015年発行 でスロヴァキアが分かれ20年以上経ているために、客観性が見られるように思う。チェコの歴史は何度も見直され、時代ごとに都合よく書き直されてきた。最大の転換がおそらく第一次大戦後。オーストリアやハプスブルク、ドイツからのスラブ(英語のslaveの語源らしい)の独立の後、スラブの歴史をつくらなければならなかった。フスの像もその一つ。その後の大戦、ソ連下での歴史の書き換え、共産圏崩壊の後の民主化の道。1918年のマサリク、そしてハヴェルは特筆すべき2017/06/02
たまご
24
現在はチェコではなくスロバキアにお住いの筆者.プラハの話は「プラハ迷宮の散歩道」を片手に.プラハとチェスキー・クルムロフに行ったことがあるのですが,筆者と違い,なんと表面しか見ていないことよ. 20世紀初頭は同じ国に,すぐそばに,違う言語を話して違う民族の人がいて,それが当たり前だった(チェコ系もドイツ系もユダヤ系ですら…!)というのが不思議ですが,不思議な今の方が本当はおかしいのか.チェコ人の外国人に対する依存性と排他性,というのがしたたかでもあり怖くもあり. 再度,チェコに行きたいと思いました.2015/09/27
Nobuko Hashimoto
23
可愛くてロマンティックなばかりではない、チェコの歴史の「黒い」部分=ダークサイドを取り上げた一冊。研究書のように厳密に出典を明示したものではないが(参考文献一覧はある)、現地に長く住んでいるからこその実感や取材の成果が盛り込まれていて面白い。歴史的事件や出来事そのものの説明だけでなく、その後の体制転換のなかで、それらがどう伝えられ、評価されてきたかについて触れているところが参考になった。特に、敏腕経営者バチャによるズリーンのまちづくりの章が大変面白かった。全体にもう少し写真や図版等があればさらに良いかと。2020/02/17
秋良
16
現代に至るまでのチェコの歴史を、都市史と民族史の方面から見るルポに近い作品。兵士シュヴェイクの冒険やエリアスタディーズを既に読んでいるのでそれほど新たな驚きはなかった。ただ、視点が現地に住んでいる日本人目線なので一歩踏み込んだチェコ人の感情に触れられた気がする。プラハに行った時、元はボヘミア王国だったプライドと、強国に振り回される卑屈さで屈折した国民性を感じた。同じ旧ソ連圏でもウズベキスタンとは違う雰囲気。2024/12/17
中島直人
16
(図書館)どちらかというと、歴史の被害者として語られることの多い印象のチェコ=ボヘミアの、裏側暗黒エピソード集という印象。知らなかった内容、違う視点からの考察など学べる部分はありましたが、文章全体が暗く重すぎて、正直なところ読むのがしんどい。2018/06/17