内容説明
200年前に書かれた『フランケンシュタイン』が提示する問題系の現代的な意義=「つぎはぎ」「知性や労働の複製」「母性をめぐる解釈」などをめぐり、日本の戦後SFへの継承をたどる!鉄腕アトム、鉄人28号、人造人間キカイダーなどの国産の漫画、アニメを「怪物からロボットやサイボーグへ」というテーマでつなぎ、日本SFの代表的作家、小松左京、光瀬龍、荒巻義雄、田中光二、山田正紀などへの継承と変遷をたどり、伊藤計劃と円城塔の合作『屍者の帝国』と通底する精神史とは…。
目次
第1部 メアリー・シェリーの遺産(生命創造とつぎはぎの身体;魂なき肉体と機械の複製;境界線上の怪物;グローバル化のなかの怪物)
第2部 戦後日本におけるフランケンシュタイン(怪物からロボットやサイボーグへ;神との闘争をめざして;フランケンシュタインと対抗文化;怪物たちの共同体;フランケンシュタインの問題群)
著者等紹介
小野俊太郎[オノシュンタロウ]
1959年、札幌生まれ。東京都立大学卒業後、成城大学大学院博士課程中途退学。文芸評論家、成蹊大学などで教鞭もとる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Nekono
9
精神史とするには内容が雑駁としすぎているんじゃないだろうか。論考というよりエピソードを繋ぎ合わせたものというべきだろう。ただ、エピソードは豊富に挙げられており、ゴッチク小説、原作の背景や日本のSF、漫画、特撮の豆知識は豊富に得られる。資料として、あるいは、自分の思考を展開する材料として優れていると思う。(エピソードによっては参照元が明記されていないという欠点はある)2015/09/20
スプリント
8
前半はフランケンシュタインが書かれた時代背景と作品の意図するところを読み解き、後半は日本のSF作品との関係性を考察しています。取り上げられている作品が幅広く読んでいて飽きがきませんでした。2015/11/07
臓物ちゃん
4
劇場版『屍者の帝国』のグッズコーナーに普通に置いてあってビビった一冊。フランケンシュタインという概念をタネにいろんな話題を語りつくすといった感じの内容で、植木鉢の底に土を敷き詰めるような感覚で幅広い知識をギュッギュと脳に詰め込められ、屍者の世界がグッと広がった。肝心の『屍者の帝国』に関しては佐々木敦『あなたは今、この文章を読んでいる』よりは突っ込んでないなとは思ったものの、円城塔の名前の由来もちゃんと紹介してくれたのが良かった。まぁまぁオススメ。2015/11/23
てつこ
1
第一部が面白かった。フランケンシュタインの著者、メアリー・シェリーの人生と、ストーリーから導き出される数々の要素について考察する。生命の創造は神にのみ許される所業のため、怪物は純創造の扱いとなる。ヴィクターと怪物の父ー子の関係と、そこから反射されるように浮かび上がる母親の不存在、家族や社会のネットワークの中にいるヴィクターと家なき子の怪物など様々な対比関係が複雑に入り組んだ物語らしい。第二部はフランケンシュタインが日本でどのように受容され派生したか等を考察したもの。後半はちょっと冗長だったかな。2022/01/10
ろくしたん
1
パラっと。ゴシック・ロマンについてはあまり書いてなかった。2021/01/22