内容説明
一九五二年に発効したサンフランシスコ講和条約によって、「占領下の日本」から脱した一九五四年十一月三日の文化の日初代のゴジラは登場し、二〇一四年で還暦を迎えた…。五四年の第一作目を徹底的に読み解くことによって、見えてくるゴジラに込められている精神史とは?『モスラの精神史』『大魔神の精神史』に続く“精神史三部作”最新刊!
目次
はじめに ゴジラが還暦を迎える
第1章 叙事詩としての『ゴジラ』
第2章 海に潜むものの影
第3章 最終破壊兵器どうしの対決
第4章 原始怪獣か、原子怪獣か
第5章 ゴジラ=ゴリラ+クジラ
第6章 アメリカとしてのゴジラ、日本としてのゴジラ
第7章 その後のゴジラの足跡
著者等紹介
小野俊太郎[オノシュンタロウ]
1959年、札幌生まれ。東京都立大卒業後、成城大学大学院博士課程中途退学。文芸評論家、成蹊大学などで教鞭もとる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Bugsy Malone
69
水爆や原爆、戦争との関連性、終戦間も無い制作当時の世情を鑑みた上での考察、「原子怪獣現わる」や「キング・コング」などアメリカ怪獣映画との比較による、日本独自の神としてのゴジラの在り方。ゴジラと芹沢博士、ヒロイン恵美子の群像、そして後継作品におけるゴジラの多様性への見解。少々まとまりがない印象は受けましたが、今までには無かった考察も含め非常に興味深い内容で大変面白く読ませていただきました。2019/10/11
zirou1984
38
精神史とあるが、最終章を除き基本的には初代ゴジラの背景を浮き彫りにする時代史本。1954年という時代の潮流と登場人物の造詣、またゴジラの進行ルートといった各視点から当時の政治世相や文化風俗を明らかにしていく。本書が執筆されたのは2年前のゴジラ60周年を記念してだが、面白いのが初代ゴジラを分析するこで最新作であるシン・ゴジラの読み解きにも繋がるということ。個人的にはプロレス史とゴジラ史を重ね合わせたカルチャー分析を期待してたが、本作は本作で丁寧な時代分析が行われており、興味深い視点を導いてくれるものだった。2016/08/25
かやは
14
ゴジラが象徴する様々なもの「原爆」「黒船」「英霊」それら全てに戦後日本人は「共感」を覚えた。だからこそ、長年愛されるキャラクターとなった。災害の多い日本という国における現代の神話。それが新たに語り直されるとき、私たちは何を得ることができるだろうか。「シン・ゴジラ」多いに期待します。2016/04/29
ウチケン
9
『シン・ゴジラ』は、三度観た。一作目の『ゴジラ』をリアルタイムで観た人達もきっと同じ感覚に陥ったと想像する。昭和29年、人々には戦争の記憶がまだ色濃く残っていた。観客の心の底に眠っている其の要素と結び付くことで、物語の効果が何倍にも増幅されたのだろう。ゴジラの出現はまた、この時代に日本が抱えていた問題をもこじ開けたとも言えるのではないか。著者は言う「今求められているのは、未曾有の天災と人災の双方を体験した日本に必要な新しい叙事詩。其の事は果たして叶うのだろうか。」叶いましたよね!『シン・ゴジラ』で。2016/11/08
服部
8
授業の期末レポートを書く際の参考文献。1954年に公開された『ゴジラ』を中心に、様々な視点から論じていました。また、本の中で取り上げられていた参考論文も非常に面白かったので、そちらの方も探して読んでみようと思いました。初めて1954年版『ゴジラ』を観たのは『シン・ゴジラ』を観た後だったので正直物足りなさを感じましたが、この本を読んだ後にもう一度『ゴジラ』を見直すと、作中の小さな事象に大きな意味が込められていたことがよく分かり、楽しむことができました。1954年版『ゴジラ』を観る際は必携の一冊だと言えます。2017/08/03