出版社内容情報
日系アメリカ人作家ヨシコ・ウチダの人生に大きな影響を与えた「強制収容」体験。1941年12月7日、日本のハワイ真珠湾攻撃による日米戦争勃発と共に、アメリカは「敵性外国人」の名の下に、日系アメリカ人を住居から退去させ、強制収容した。この市民権の剥奪と強制収監の経験を、ウチダに限らず多くの作家が、そのマイノリティへの抑圧、人種差別憎悪について作品で描いていっている。民主主義国家の汚点として意識されながらも、現在まで、アメリカ社会にある有色人種への差別や少数派への差別意識は無くなってはいない。かつての日米経済摩擦、9.11事件、そして今トランプ大統領が叫ぶ「アメリカ第1主義」にも通底する排除・差別意識に対し、本書は、児童向け、大人向けでは異なる描き方をしてはいても、それらへの眼差しを向け続けたウチダ文学と、同じく「強制収容」体験を描いた同時代作品との比較再評価を行い、強制収容体験のウチダ文学における意味を追求している。
内容説明
アメリカ社会に潜む分断と排除の“潜流”に警鐘を鳴らし続けたウチダ文学の再検証!日米戦争の勃発とともに「敵性外国人」の名の下に日系アメリカ人を強制収容したアメリカ。民主主義国家の汚点とはいうものの、アメリカ社会にある人種差別やマイノリティ差別意識の解消には至っていない。かつての日米経済摩擦時や9.11事件、そして今のトランプ大統領が叫ぶ“アメリカ第一主義”に呼応する排除・差別の意識に対抗するウチダ文学の再評価!
目次
第1部 強制収容体験とウチダ作品の世界(『ぶんぶく茶釜とその他日本の昔話』―強制収容との関連で読む;『タカオと祖父の刀』と『間にはさまれたミヤ』―冷戦期の日系人の同化志向との関連で読む;『トパーズへの旅』と『故郷に帰る』―多文化主義児童文学のオーセンティシティの観点から読む;『トパーズへの旅』と『故郷に帰る』―ウチダの執筆の意図を考える;リンコ三部作『夢は翼をつけて』『リンコの逆転ホームラン』『最高のハッピーエンド』―リドレス運動との関連で読む;『写真花嫁』―抑圧の観点から強制収容までの日系の歴史を読む)
第2部 ウチダの思いを受け継ぐ二十一世紀の強制収容物語(ジュリー・オオツカの『天皇が神だったころ』とシンシア・カドハタの『草花とよばれた少女』―砂漠表象を「パイオニア」言説との関連で読む;サミラ・アーマドの『強制収容』―イスラム教徒排除への抵抗;カービイ・ラーソンの『ダッシュ』とロイス・セパバーンの『マンザナの風にのせて』―多文化主義児童文学のオーセンティシティの観点から読む)
著者等紹介
小松恭代[コマツヤスヨ]
福井県立大学学術教養センター教授。金沢大学大学院人間社会環境研究科博士後期課程修了、博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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