出版社内容情報
本書はポーの作品をめぐる批評集である。三部立て構成となっており、1つの章で1つの作品をとりあげ、厳密に読み解いてゆく。それぞれの章では異なった作品を扱うが、各部ごとに連関したテーマを含む。第1部は「ゴシック・ホラーの喪とメランコリー」。ポーのゴシック的な詩や小説における「横たわる」ことのモチーフに焦点を絞り、それが有する現世主義に対する「脱中心性」を読み解く。第2部は「SFの時空間」。ポーのSF的な冒険小説を取り上げ、そこにおける時空間や身体の超越の問題について批評し、「いま・ここ・わたし」を起点とする人間中心主義的思考を「脱中心化する想像力」を抽出することを試みた。第3部は「起源のミステリーとミステリーの起源」。一見すれば推理仕立ての小説にみえるポーの作品が、本当に謎解きを本質としたものなのか?その疑問から仮面の下にひそむモチーフに注目し、「脱中心性」をあきらかにする。そして補足補完すべく3つのエセーを付し、ポーの短篇小説を翻訳する。それは、ポー文学の脱中心性を知る上で、格好のものとなるのが小説だからである。
内容説明
アメリカ文学の作家エドガー・アラン・ポーにかんするモノグラフ。ポーの生涯にわたる文学的営為を「脱中心」というキーワードで再検討し、その視点から詩や小説を読解。そして補完すべく3つのコラムを付す。さらには短編作品を翻訳。ポー文学の脱中心性を知るうえで格好の書物である。
目次
序章 なぜ脱中心なのか
第一部 ゴシック・ホラーの喪とメランコリー(死者と横たわること―「大鴉」をめぐって;横たわることの詩学―「アッシャー家の崩壊」の謎をとく)
第二部 サイエンス・フィクションの時空間(空気の隠喩―「ハンス・プファールの比類なき冒険」探索;自我なき海への郷愁―『アーサー・ゴードン・ピムの物語』・SF・脱中心)
第三部 起源のミステリーとミステリーの起源(太陽の指針―「黄金虫」と『スタイラス』の図像学;脱中心の詩学―「モルグ街の殺人」における遊戯の規則)
付録 翻訳(楕円形の肖像;ウィサヒコンの朝;週に三度の日曜日;本能と理性―ある黒猫の話;夢のなかの夢)
著者等紹介
森本光[モリモトヒカリ]
奈良県出身。東京大学文学部言語文化学科卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。博士(文学)。英国ケント大学大学院映画研究コース修了。修士(映画)。現在、和歌山大学専任講師。専門はアメリカ文学と映画(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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