出版社内容情報
意識しないほどの深い関係
本書は、さまざまな角度から三世紀にわたるスペインの植民地支配や大航海時代のことに焦点を当て、筆者のスペインや中南米滞在時代の思い出を交え、論を展開する。スペインや中南米の歴史・文化など個々の事情に触れ、興味深い話題を語る。また、多くの友人の助けを借り、スペイン・中南米双方の相手に対するイメージ・意識をまとめる。スペイン語についても、スペインと中南米のスペイン語の違いとその背景を説明。さらに踊りや食事、ワインなどの文化面に言及するとともに、新大陸からスペインに伝わったもの、逆にスペインから新大陸に伝わったものについても話題にした。最後には、スペインと中南米との間で、人々の性格や意識の共通点あるいは政治的な決断に際しての類似点という観点から、過去ないし現時点で進行中の紛争にどういう影響を与えているかについても触れている。筆者が滞在したスペイン、アルゼンチン、パラグアイおよびコロンビアでの体験が本書の中心となっているが、中南米についての議論を展開するうえで不可欠と思われるメキシコについても先行研究の助けを借りて言及する。また、ニューヨーク国連代表部勤務時代に、多くの中南米出身の外交官と交流があったため、そこで経験したことも織り交ぜている。ポルトガルとブラジルとの関係は、本書の中心テーマではないが都合上、ところどころでポルトガルやブラジルについても言及を行った。結論的には、スペインと中南米との関係はしっかりとした絆で結ばれており、「意識しないほどの深い関係」であると言うことができるものであった。本書は、外交官であればこそ知り得た話題そして知識をふんだんに盛り込んだ、スペインと中南米への物の見方が深まる評論となっている。
内容説明
スペインと中南米のつながりに多角的な視座から切り込んだエッセイ集。三世紀にわたるスペインによる植民地支配や大航海時代に焦点を当て、著者のスペインや中南米滞在時の想い出を交えつつ、双方の歴史と文化、個々の事情を考察し、両者の絆に迫る。スペインや中南米に赴任される方はぜひ一読していただきたい!
目次
第1章 歴史的に見たスペインの中南米植民地支配
第2章 文化的な観点から見たスペインと中南米
第3章 スペイン、中南米諸国民のそれぞれの相手に対する感情
第4章 メキシコという特異な存在、征服者とクリオージョ
第5章 文化面からの分析
第6章 人種・民族・宗教から見たスペインと中南米、教育と科学技術
第7章 移住、ヨーロッパ、対米関係の観点から見たスペインと中南米
第8章 経済面から見たスペインと中南米
第9章 人間関係と性格、ラテンアメリカ社会の特質
第10章 意思決定におけるスペインと中南米の頑固さ―政権移行期と独立運動・内戦・戦争の場合
終章
著者等紹介
渡部和男[ワタナベカズオ]
1951年愛媛県生まれ。1975年東京大学教養学部教養学科卒業。1976年外務省入省。本省では日欧経済関係、安全保障、経済協力などを担当し、2011年、科学技術協力担当大使を務めた。海外では、イタリア、タイ、アルゼンチン、スペインの大使館及び国連日本政府代表部に勤務し、パラグアイ(2008~2011年)及びコロンビア(2012~2015年)では日本国特命全権大使を務めた。この間、埼玉大学大学院、神戸大学経済学部において、さらに退官後、龍谷大学法学部で教鞭をとり、東京理科大学では国際化推進を担当した。研究テーマは国際政治、ラテンアメリカ地域研究、開発援助論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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