出版社内容情報
「記憶」を掘り起こしながら持続可能な未来を思い描き、豊かな四季の「風景」を
描写することは多くの小説に共通する要素である。
本書は、ケベック文学を一望する体系的研究というものではなく、
以前から書き溜めてきたケベック文学に関する論考を
「記憶」と「風景」というテーマで再び書き直し、筆者の心に留まった作品を
読解していったものである。
本書への接し方としては、二十世紀初頭から現在に至るまでのケベック文学の
主な傾向を概観する第1章を最初に一読すれば、あとはどこから読んでもよい。
ケベック州は、フランス系の移住者が新大陸に渡ってから四百年あまり、
数多の困難を乗り越えたくましく生きてきた地域である。
現在は、圧倒的な英語圏である北米大陸にありながら、仕事も日常生活も
祖先から受け継ぐ仏語で行い、しかも多様な民族へと開かれたユニークな
間文化社会を実現している。そこでは、文学は、仏語を維持しつつ、
異なる者同士が文化的背景について語り合いながら、互いに理解し合うための
重要な媒体となっているのである。
[内容・目次]
(1)ケベック文学へのいざない―多様性に開かれるフランス語
(2)小さな幸福の権利―ガブリエル・ロワ『束の間の幸福』における身体と風景の描写
(3)アンヌ・エベールが描くケベック女性―生誕100周年にちなんで
(4)ポエジーとサスペンスのあいだで―アンヌ・エベール『シロカツオドリ』の海景(5)詩的象徴性と「移住(者)のエクリチュール」
(6)旅・亡命・帰還・彷徨―ダニー・ラフェリエール『帰還の謎』
(7)漂流と記憶―ダニー・ラフェリエール『甘い漂流』
(8)イン・チェンの小説における象徴性―『岸辺は遠く』
(9)ケベックの先住民社会―ナオミ・フォンテーヌ『クエシパン、あなたへ』
(10)森と記憶―ジョスリーヌ・ソシエ『鳥たちの雨』
内容説明
本書はケベック文学を一望する体系的研究ではなく、筆者の心に留まった作品を「記憶」と「風景」というテーマで読解する。二十世紀初頭から現在に至るまでのケベック文学の主な傾向を概観する第一章を一読すれば、あとはどこから読んでもよい。ケベック州は、フランス系の移住者が新大陸に渡ってから四百年あまり、数多の困難を乗り越え、たくましく生きてきた地域。圧倒的な英語圏である北米大陸にありながら、仕事も日常生活も祖先から受け継いだフランス語で行い、多様な民族へと開かれた間文化社会を実現している。そこでは、文学はフランス語を維持し、異なる者同士が文化的背景について語り合い、理解し合うための重要な媒体となっている。
目次
第1章 ケベック文学へのいざない―多様性に開かれるフランス語
第2章 小さな幸福の権利―ガブリエル・ロワ『束の間の幸福』における身体と風景の描写
第3章 アンヌ・エベールが描くケベック女性―生誕一〇〇周年にちなんで
第4章 ポエジーとサスペンスのあいだで―アンヌ・エベール『シロカツオドリ』の海景
第5章 詩的象徴性と「移住(者)のエクリチュール」―アキ・シマザキ『秘密の重圧』五部作
第6章 旅・亡命・帰還・彷徨―ダニー・ラフェリエール『帰還の謎』
第7章 漂流と記憶―ダニー・ラフェリエール『甘い漂流』
第8章 イン・チェンの小説における象徴性―『岸辺は遠く』
第9章 ケベックの先住民社会―ナオミ・フォンテーヌ『クエシパン、あなたへ』
第10章 森と記憶―ジョスリーヌ・ソシエ『鳥たちの雨』
著者等紹介
小倉和子[オグラカズコ]
1957年生まれ。上智大学文学部フランス文学科卒業。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。パリ第10大学博士(文学・人文学)。現在、立教大学異文化コミュニケーション学部教授、日本ケベック学会顧問。現代フランス文学・フランス語圏文学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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