出版社内容情報
ジオノによる唯一の反戦小説。
ヴァランソル高原を通過する羊の群れ。
羊の群れ(Troupeau)と兵士の群れ(Troupe)。
ジオノはフランス人の生活にとり、きわめて重要な「羊」の群れを
冒頭に登場させることによって、この作品に象徴的な意味を注ぎ込んでいる。
若者たちは戦争に出征していった。物語のなかで血なまぐさい
戦闘そのものが描写されることはない。
致命傷を負い瀕死の状態にある戦友を見守る兵士。
ドイツ軍が撃ってくる弾丸を塹壕のなかで避けている兵士。
妻からの手紙を読む兵士。死んだ赤ちゃんを齧っている豚に短刀を
突き刺し、豚と格闘する兵士。羊の群れのなかの
もう動けなくなっていた子羊を預けていた老羊飼いがその子羊を
受け取りにアルルからやってくる。折しも赤ちゃんが生まれ、
ヴァランソル高原にも生命の兆しが感じられるようになっていく。
正義や平和のための戦争はありえない。戦争はいったん始まって
しまうと、止められない。戦争は戦闘に参加する兵士たちだけでなく、
銃後を守る女や老人・子供にも悲惨さしかもたらさないことを、
この作品は雄弁に語っている。
内容説明
羊の大群と兵士の大群。無慈悲な戦場に送られた兵士たちと銃後を守る女や老人たちを対比して描写する画期的な構想の物語。戦場の「砲弾と砲火の大包丁の下」で右往左往する兵士たち、ヴァランソル高原で戦争の荒波に耐える住人たち。ヴェルダン近辺の熾烈な戦場にプロヴァンスから出兵した二人の青年が見たものは、そしてそこで受けた戦争の傷は?戦争を静かにそして鮮烈にプロヴァンスの視点から物語るジオノの最高傑作にして唯一の反戦小説。
著者等紹介
ジオノ,ジャン[ジオノ,ジャン] [Giono,Jean]
1895年‐1970年。フランスの小説家。プロヴァンス地方マノスク生まれ。16歳で銀行員として働き始める。1914年、第一次世界大戦に出征。1929年、「牧神三部作」の第一作『丘』がアンドレ・ジツドに絶賛される。作家活動に専念し、第二次大戦では反戦活動を行う。1939年と1944年に投獄される
山本省[ヤマモトサトル]
1946年兵庫県生まれ。1969年京都大学文学部卒業。1977年同大学院博士課程中退。フランス文学専攻。信州大学教養部、農学部、全学教育機構を経て、信州大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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