内容説明
テーマごとの読み、周辺情報、作品解題など、ピンチョンを楽しむためのエッセンスを凝縮。
目次
ピンチョンが語る―エッセイ二編(ドナルド・バーセルミ『ドン・Bの教え』への序文;ジム・ダッジ『ストーン・ジャンクション』への序文)
ピンチョンを語ろう(ピンチョンのポストモダニズム;起源 理性と狂気―歴史的メタフィクションとしての『メイスン&ディクスン』;展開 ツーリストの論理―学び、地図、強制収容所跡;表現 ピンチョン節とは何か?―文体的特徴について;本質 探偵と電球―「見ること」の変態;再構築 ピンチョンにみるポストモダン小説の変遷―『ヴァインランド』の必然;継承 パラノイド文学史序説―ディック、ピンチョン、ホフスタッター)
著者等紹介
麻生享志[アソウタカシ]
早稲田大学教授。現代アメリカ文学・文化専攻。ニューヨーク州立大学バッファロー校大学院修了(Ph.D,1996)
木原善彦[キハラヨシヒコ]
大阪大学大学院准教授。現代アメリカ文学・文化専攻。京都大学大学院博士課程修了、博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
113
ピンチョンが早熟であり、寡作であり、それがために1960年代前半にデビューした彼は、2000年以降も作品を出している。9.11のNY。その頃(今も?)彼はNYに住んでいて、息子は小学生。息子の通う学校に事件の後に寄稿したらしい。ビルに向かう飛行機には「重力の虹」が重なる。キーワードのひとつが「見られる」であり、「女性とセクシャリティ」としてみたら、村上春樹的世界がぼんやりと重なってきた。ポストモダンにハルキは分類できる? まあ、そんな事は結局どうでもいいこと。作品を、テキストを、素直に読まなくては。2021/05/24
zirou1984
39
ピンチョンが他の作家にあてた序文や日本人研究者の小論、各作品ガイドと日本語圏で情報の少ないピンチョンについて俯瞰できる内容。本書には未収録だがピンチョンがガルシア=マルケスの『コレラ時代の愛』について書評を執筆しているというのは驚き。近年の旺盛な執筆状況とその作風もあり、ポスト・ピンチョンとは現在のピンチョン自身が体現しているという指摘は興味深い。もちろん、ここにあるのは模範解答ではなく可能性の集積だ。9・11と現代テクノロジーを主題とした最新作『ブリーティング・エッジ』の邦訳が俄然待ち遠しくなってきた。2015/05/17
壱萬参仟縁
28
『重力の虹』は偏執症文学の最高峰(19頁)。ジェイムソンの視点では、 ポストモダン的状況とは、認知地図への挑戦(75頁)。他に面白い論点は、ホロコースト跡地見学のようなダーク・ツーリズム(DT)で、J・レノンは起源を巡礼に見ているという(105頁本文&脚注)。この言葉は初めて知った。御嶽教はダークではないのだが。イメージとしてゴールドって感じがする。行動する社会学者古市憲寿氏が本を書いているようなのはDTなのかもしれない。 2014/08/25
川越読書旅団
26
ピンチョン作品の概要と主にポストモダニズム視点から分析するピンチョン作品解説で、作品を内から外から理解することができる作品ガイドとして非常に有用な1冊。結果、ピンチョンの本質的な理解は遠い道のりである事を確信、、、残念!2021/07/03
梟をめぐる読書
19
極度に専門的すぎることなく作家研究の入門用として十分に使える、良質の作家ガイド。日本語のテキストではあまりお目にかかれないピンチョンの家系図や目撃エピソード、9・11直後に行われた幻のインタビューの真相など、興味深い記事が多い。評論の章では「ピンチョンとポストモダン(化した社会)」の関係を軸に小説の文体やメタフィクション、パラノイドやダークツーリズムとの関連から各作品の価値が改めて問い直される。詳細なあらすじが付された作品ガイドやお勧め評論リストなど巻末まで隙がなく、遅れてきたピンチョン読者に優しい作り。2014/10/11
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