内容説明
19世紀後半~20世紀初頭のアメリカで大量に出版された安価な物語群「ダイムノヴェル」。大衆が愛読した「ダイムノヴェル」の特徴から、アメリカ社会の底辺に蓄積された文化的営為を掘り起こし、アメリカ人に形成された「意識」を探る。ネイティヴ・アメリカン、奴隷制、西部のアウトローから探偵小説、SF、ワーキングガールまで。
目次
第1章 ダイムノヴェルの登場―スティーヴンズ『マラエスカ』とエリス『セス・ジョーンズ』
第2章 ダイムノヴェルと奴隷制―ヴィクター『モーム・ギニーとそのプランテーションの「子どもたち」』
第3章 無法者のヒーローと男装のヒロイン―ウィーラー「デッドウッド・ディック」シリーズ
第4章 ダイムノヴェルと探偵小説―ヴィクター『配達されない手紙』『フィギュア・エイト』
第5章 SFダイムノヴェル―テクノロジー、冒険、帝国主義
第6章 ワーキングガールから遺産相続人へ―ローラ・ジーン・リビーの恋愛小説をめぐって
著者等紹介
山口ヨシ子[ヤマグチヨシコ]
1986年、津田塾大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。現在、神奈川大学外国語学部英語英文学科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
くさてる
15
19世紀後半に、「ダイムノヴェル(10セント小説)」と銘打って大量に出版され、大衆に愛された読み物たち。そのほとんどは時代の流れと共に忘れ去られたものの、現代の人気ジャンルの原型がそこかしこに見つかる。そんな人気作を紹介し、解説した一冊。文学的価値とかそういうものよりさきに、人間が「物語」を求めるより根源的な欲望に迫った一冊だと思う。面白かったです。2021/06/16
シャル
10
19世紀後半のアメリカに存在した大衆小説であるダイムノヴェル。その『物語の大量生産』がなにを描き、どのようにして消費されていたのかを分析した一冊。ジャンルの持つ『安さ』ゆえに現代において影響が鑑みられることが少なく文化史で語られない部分があることや、西部アウトロー小説から始まり、文明の移り変わりによって探偵小説とSF冒険小説それぞれのジャンルへ広がり、恋愛小説へ着地するのは、形は異なれど現代にも受け継がれる方向性に思え、当時のアメリカの社会性と同時に物語を消費する事そのものにも通じているようで興味深い。2016/09/19
スターライト
4
野田昌宏氏もその著書で取り上げたことのある「ダイムノヴェル」について書かれているとのことで以前から関心があったが、今回ようやく読み終えることが出来た。SF者なので「フランク・リード・ライブラリー」が興味の中心であったが、19世紀後半から20世紀初頭にかけて発行された「ダイムノヴェル」が、当時のアメリカ国民の多くに読まれ、その生活に大きく寄与してきたことを知ることができ、大変有益だった。作品のテーマの変遷が当時のアメリカの社会発展を色濃く反映していることが多数の図版で明らかにされ、大衆文化の理解に不可欠の書2014/03/03
うにこ。
0
ここ数年、病院の待ち時間でずっと読んでた。ダイムノベルの成り立ちから、読者の変遷、当時のアメリカの世相までを追った本。欲しかった情報は前半だけど、読み込んだのは後半かな。アメリカェ…って気持ちになるぞ!2022/11/13