内容説明
多様性を承認する寛容な社会。はたしてそれは本当に実現したのか。(ネオ)リベラリズムとフェミニズムはどのような関係を切り結ぶのか。21世紀の現在から、ジェンダーの自由とジェンダーの規範を再考する。
目次
第1部 ジェンダーの理論(フロイトのセクシュアリティ理論とジェンダー問題;性的差異の二律背反―カント、フロイト、ラカン派精神分析;ポストフェミニズムと第三波フェミニズムの可能性―『プリキュア』、『タイタニック』、AKB48 ほか)
第2部 リベラリズムとジェンダー(デモクラシー、メリトクラシー、女性の暮らし―二〇世紀イギリスのリベラリズムとジェンダー;主体化、ジェンダー化―家父長制資本主義体制下のイングランドとアイルランド;船乗りの物語を紡ぐ女性―ジェイン・オースティン『説得』再考 ほか)
第3部 クィア・スタディーズ(男性性とセクシュアリティの教育―ヘンリー・ジェイムズ「巨匠の教え」;エイズ・アートとセクシュアル・マイノリティの政治―『フィラデルフィア』、『レント』、『ザ・ノーマル・ハート』;市民社会と表現の可能性―dumb typeによる『S/N』 ほか)
著者等紹介
三浦玲一[ミウラレイイチ]
一橋大学大学院言語社会研究科教授。専門分野はアメリカ文学、ポストモダニズム
早坂静[ハヤサカシズカ]
一橋大学大学院法学研究科専任講師。専門分野はアメリカ文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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くり坊
2
「クィア理論圏内におけるレズビアン/ゲイ研究は、1980年代のポスト構造主義の仕事にとくに依拠してきた。ポスト構造主義の重要な特徴の一つは二項対立の脱構築であった。〔…〕したがってヘテロセクシャル/ホモセクシャルのペアは脱構築される。このペアにおける対立は、なにをおいてもまず、内在的に不安定なものであると見なされる」と。クィア研究は、従来のレズビアン研究の新しい総称であるとともに、レズビアン研究、ゲイ研究、いずれにも属さぬ第三極のありかを示す用語ともなる。(296頁)という記述が分かりやすかった。2022/01/18
bibliophile_k
0
目次を見て面白そうだと思って手に取り、読み始めたら論文集であることに気づいた。研究論文なので、難しい章もあるが、文学や映画、社会的な問題としてニュースでも目にする分野が多く、何とかな入り込んでいけた。それぞれの章で扱う問題や観点が興味深いし、AIDSをはじめ、知識不足、理解不足による差別で心を痛めた人が多いのを改めて知ると何とも言えない感情が湧いてくる。想像していた内容ではなかったが、読んでよかった。個人的には後半のクィアの部分が興味深かった。何はともあれ、みんなが自分らしく生きられる社会になって欲しい。2025/07/03
takao
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ふむ2025/06/25
竜崎
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消費される/消費する「クィア」の章にて、Netflixの「クィア・アイ」が「五人のゲイ男性が異性愛者の男性にファッションや食事、インテリアなどについてのアドバイスをあたえ、メイクオーバーを手伝う」「多数派に有益な技能をもつ少数派としてクィアが消費されている」と記載されているが、そもそも「クィア・アイ」は異性愛者の男性だけでなく異性愛者の女性も同性愛者もすべての老若男女をメイクオーバーする。そして消費財の指南(ファッション・食事・インテリア)だけでなく、内面のトラウマや悩みをサポートするゲイ男性もいる。2022/11/02
Yuki
0
LGBT/SOGIの問題は、いまだ制約が大きすぎるがゆえに、自由の希求の声が通りやすい。つまりは、マクロな問題にのみ、一枚岩になりやすい時代状況にあるということを念頭に置いておかなければならず、ミクロなアイデンティティの問題は相当にセンシティブである。/また、ジェンダーという大所になると、既に2次、3次……と関係領野を拡げているが、閉塞感や内部分裂、実現希求モデルのバラつきが目立つところである。無論、ジェンダー平等を下敷きにしつつも、それ以外の変数・メタシステムを焦点とした議論・分析が望まれる。2022/01/16