内容説明
見てもいない風景、体験してもいない事象を詠む歌…読者をいかに引き寄せ、動揺させ翻弄するか。そこにこそ短歌創作の核心がある。
目次
はじめに―短歌の中の「私」
第1章 穂村弘の「私」(恐ろしいのは;既視感のもつちから―穂村弘の歌を読む ほか)
第2章 まだ自らのために―「平井弘」論
第3章 歌人論の中の「私」(写生短歌私論―佐藤佐太郎『しろたへ』を読む;『方代』の中の方代 ほか)
第4章 嘘をつく「私」(短歌は人を騙すか;『紐育空爆之図』の挑発 ほか)
第5章 韻律、定型、主題(レイアウト短歌論;正述心緒がもたらすもの―『昭和短歌の精神史』を再読する ほか)
著者等紹介
山田消児[ヤマダショウジ]
歌人。1959年生。短歌同人誌『遊子』『Es』所属(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yumiha
1
一人称の文芸と言われているらしい短歌。自己表白をそのまま受け取ることなく、多くの歌人が、フィクションを行使していかに読者を騙しているかについて例証を挙げながら展開された本。「大嘘を書いてみたい」と言う川柳作家の石部明さんのように、いかなる文芸であろうとも、フィクションを取り混ぜて成り立つ。ノンフィクションですら、取り上げた(あるいは取り上げなかった)題材・角度により読者を意図的に導くことができるだろう。「平井弘」論が面白く、その短歌にも心惹かれた。2010/03/05
warimachi
0
「『紐育空爆之図』の挑発」「「私」に関する三つの小感」が、実作者としての物の見方が窺えておもしろかった。2012/07/06