出版社内容情報
アメリカの奴隷制を正面から取り上げ、19世紀最大のベストセラーとなった『アンクル・トムの小屋』。
南北戦争のみならず、当時のゲームやファッションにも影響を及ぼし、近年には、女性作家、大衆小説の側面からの再評価が進んでいる。
奴隷制や人種問題、南北問題、キリスト教、家庭小説としての価値や女性運動、ジャーナリズムとの関係など、『アンクル・トム』が内包する複雑で多様なテーマをさまざまな角度から論じる初の本格的批評書。図版多数。
▼序章 ハリエット・ビーチャー・ストー
『アンクル・トムの小屋』出版まで(高野フミ)
1 ニューイングランドのビーチャー家~ハリエット誕生まで
2 少女時代~初めての本の出版まで
3 ボストンからシンシナティへ~初めての奴隷農場訪問
4 レーン神学校~結婚・試練・奴隷制問題
5 『アンクル・トム』出版まで
■第1部 『アンクル・トムの小屋』を読む
▼『アンクル・トムの小屋』の文学性
奴隷制社会の言説(板橋好枝)
1 『アンクル・トムの小屋』の批評遍歴
2 「人間性」の言説
3 逆説の世界~自己中心的言説
4 感受性の麻痺と逃避
5 音声言語と魂の言葉
▼『アンクル・トムの小屋』の政治的感化力とキリスト教(野口啓子)
1 政治にもの申す女性
2 天の館としての家庭
3 天の法と世俗の法
4 天の法による清算
5 感傷という革命
▼『アンクル・トムの小屋』における北部と南部(前田陽子)
1 ストーの乏しい南部体験
2 ストーの描いた南部の農園
3 奴隷制を支える北部人
4 北部の女性と南部の女性
5 北部と南部の融合の試み
▼『アンクル・トムの小屋』と奴隷主たち(梅垣代枝野)
1 奴隷制と奴隷主
2 奴隷主たち~その虚と実
3 女主人たち~優雅さの陰の苦悩と冷酷さ
4 未来の奴隷主たち~ヘンリック、ジョージ・シェルビー
5 ストー~奴隷主の解放者
▼『アンクル・トムの小屋』におけるユーモア(中村千鶴)
1 ヒーローとヒロインを支える喜劇的な登場人物の役割
2 トリックスターとしてのトプシーの役割
3 道化師サムとアンディの役割
4 「盗み聞き」がもたらす喜劇的効果
5 白人たちの階級意識を反映するユーモラスな食の責任者たち
■第2部 『アンクル・トムの小屋』と十九世紀のアメリカ社会
▼『アンクル・トムの小屋』と家庭小説(藤井久仁子)
1 家庭小説の時代
2 移動する主人公
3 導く人と導かれる人
4 大胆な女性
5 『アンクル・トム』の家庭小説性
▼『アンクル・トムの小屋』とフェミニズム批評(池野みさお)
1 十九世紀半ばの女性運動
2 キャサリン・ビーチャーとグリムケ姉妹の狭間で
3 「救い主としての母親」~社会変革の原動力としての母性
4 「感傷の力」~女性中心の社会への夢
5 フェミニズム批評家による『アンクル・トムの小屋』の復権
▼『アンクル・トムの小屋』とスレイヴ・ナラティヴ
ストーの色分けされた黒人たち(野口啓子)
1 一八五〇年代の奴隷制をめぐる言説
2 植民主義と人種偏見
3 『アンクル・トム』の色分けされた黒人たち
4 スレイヴ・ナラティヴがあばくもの~ダグラスの自伝を中心に
5 『アンクル・トム』における人種の問題
▼『アンクル・トムの小屋』と『共和国のロマンス』
奴隷制におけるセクシュアリティと母性(伊藤淑子)
1 人種問題を映しだす鏡としての異人種間結婚
2 奴隷制によるセクシュアリティの搾取
3 人種を超越する手段としての友愛結婚と家父長制
4 奴隷が母親になることの絶望
5 家庭主義の希望と限界
▼『アンクル・トムの小屋』と『アーント・フィリスの小屋』
南部の反応(山口ヨシ子)
1 「アンクル・トム・エピデミック」
2 南部人の『アンクル・トム』への関心と反発
3 奴隷制擁護論の根拠
4 南部女性によるストー批判に潜むもの
5 人種的混合への恐怖
▼『アンクル・トムの小屋』とジャーナリズム(山口ヨシ子)
1 十九世紀最大のベストセラー
2 宣伝の力と作家の力
3 新聞の特徴と連載小説の展開
4 黒人女性への性的迫害と白人女性への訴え
5 新聞連載小説から単行本の小説へ
内容説明
アメリカの奴隷制を正面から取り上げ、19世紀最大のベストセラーとなった『アンクル・トムの小屋』。奴隷制や人種問題、南北問題、キリスト教、家庭小説としての価値や女性運動、ジャーナリズムとの関係など、『アンクル・トム』が内包する複雑で多様なテーマをさまざまな角度から論じる初の本格的批評書。
目次
ハリエット・ビーチャー・ストー―『アンクル・トムの小屋』出版まで
第1部 『アンクル・トムの小屋』を読む(『アンクル・トムの小屋』の文学性―奴隷制社会の言説;『アンクル・トムの小屋』の政治的感化力とキリスト教;『アンクル・トムの小屋』における北部と南部;『アンクル・トムの小屋』と奴隷主たち ほか)
第2部 『アンクル・トムの小屋』と十九世紀のアメリカ社会(『アンクル・トムの小屋』と家庭小説;『アンクル・トムの小屋』とフェミニズム批評;『アンクル・トムの小屋』とスレイヴ・ナラティヴ―ストーの色分けされた黒人たち;『アンクル・トムの小屋』と『共和国のロマンス』―奴隷制におけるセクシュアリティと母性 ほか)
著者等紹介
高野フミ[タカノフミ]
津田塾大学名誉教授。1936年に津田塾大学の前身である津田英学塾を卒業。津田塾大学にて50年近くにわたり教鞭を執る。その間、ラドクリフ大学大学院で修士号を取得し(1953)、フルブライト研究員としてラドクリフ研究所研究員となる(1956‐57)。また、津田塾大学在職中に、国際大学婦人連盟(IFUW)において長らく指導的立場で活躍する(会長1980‐83)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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