出版社内容情報
食卓で交わされる声・書簡・手稿・書物――初期近代イギリスの《食卓談義》から、文学サークルの歴史とそこから生みだされた言説の系譜をたどる。
シドニー・サークルに接近するエドマンド・スペンサー、ベン・ジョンソンの〈アポロの部屋〉の知的エリートたちの社交、グレイト・テューに集う知識人の哲学的饗宴、ロータ・クラブのテーブルを囲む共和主義者、ウィルズ・コーヒーハウスのドライデン、オーラル・ヒストリーの源流としての食卓談義、出版界に君臨したジェイコブ・トンソンとキットキャット・クラブ、政治的思惑の渦巻くドルーリー・レイン劇場、クラブ文化の象徴的な存在でありながら、若い頃〈食卓談義〉に加われなかったジョンソン博士、アンソロジーという紙上の饗宴――。
食卓を囲んだ文人の談話から、コーヒーハウスや閉鎖的なクラブでの歓談、上流階級の優雅な会話……多種多様な《食卓談義》から浮き彫りにされるイギリス文学・文化論。
7人の気鋭の研究者による《紙上食卓談義》!
▼食卓談義の解剖学(小野 功生)
▼書斎の中のシドニー・サークル
――スペンサーの友情伝説を読む(竹村 はるみ)
序――文壇に美談あり/書物が取り持つ縁
「書簡の猿芝居」/当世秘書気質
私設秘書の裏稼業/ダブリンの読書会
出版計画は食卓で/書籍商の手稿コレクション
驚異の年/結び――書斎の中のシドニー・サークル
▼新しき社交空間を求めて
――ベン・ジョンソンの〈アポロの部屋〉前史(佐々木 和貴)
ジョンソンの〈悪魔亭〉/好古家協会とジョンソン
〈人魚亭〉のジョンソン/スコットランドのジョンソン
〈アポロの部屋〉ふたたび
▼ピンダロス的転回
――17世紀イングランドの夭折をめぐる詩学と政治学(末廣 幹)
プロロゴス――サグントゥムの嬰児
ストロペ――夭折する「息子」たち
アンティストロペ――生き長らえる神童
エポドス――生き長らえるピンダロス風オード
▼共和主義サークルという記号
――ロータ・クラブからカーヴズヘッド・クラブへ(小野 功生)
共和主義は死なず、ただ……?/狡猾な「ロータの人々」
ヴァーチュオーソも投票が好き/「臀部」が頭になる
「臀部」は燃える/「ロータの非難」という様式
ドライデンにも「ロータ」の嫌疑が/グリーンリボン・クラブ
「カーヴズヘッド・クラブ」とミルトン/浮遊する「ミルトン」
仮想の文学サークルの方へ
▼身体なき食卓談義
――書物愛のプロソポグラフィ(圓月 勝博)
『食卓談義』的君主論/オーラル・ヒストリーの源流としての食卓談義
書物の人のプロソポグラフィ/文字で読みたい食卓談義
食卓談義と活字出版の壁を超えて
ドライデンの出版業者トンソンはミルトンが好き
コンパニオン・アンソロジー・クラブ
キットキャット・クラブとラファエルの楽園
▼ドルーリー・レインの三頭政治
――18世紀初期ロンドンの劇場をめぐる政治学(南 隆太)
変化の時代――劇作家より大切な……
それは乱闘からはじまった――第一次三頭政治への道
三頭政治は演劇を変えたか?/『カトー』は第二次三頭政治を生むか
喜ばしき革命/実録――ドルーリー・レイン攻囲
演劇改良はドルーリー・レインを救えるか――一つの時代のおわり
▼食卓談義から紙上の饗宴へ
――クラブの文化と18世紀のアンソロジー(原田 範行)
衝立の後ろで息をひそめるサミュエル・ジョンソン
クラブの成熟、もしくは解体――公共圏の実態
不発に終わった食卓談義――英語アカデミー構想
新たな仕掛け人――ケイヴからドッズリーへ
紙上の饗宴――18世紀のアンソロジー
宴がはねて
▼あとがき――われもまた食卓談義にありき(圓月 勝博)
(社)日本図書館協会 選定図書
■書評……東京新聞・中日新聞(2006年9月3日)
執筆者(論文掲載順)
▼竹村はるみ
現在、姫路獨協大学外国語学部助教授。
主要著書に『詩人の王スペンサー』(共著、九州大学出版会、1997)『ゴルディオスの絆 結婚のディスコースとイギリス・ルネサンス演劇』(共著、松柏社、2002)がある。
▼佐々木和貴
現在、秋田大学教育文化学部教授。
主要著書に『新歴史主義からの逃走』(共著、松柏社、2001)『国家身体はアンドロイドの夢を見るか 初期近代イギリス表象文化アーカイヴⅠ』(共著、ありな書房、2001)『演劇都市はパンドラの匣を開けるか 初期近代イギリス表象文化アーカイヴⅡ』(編著、ありな書房、2002)がある。
▼末廣幹
現在、専修大学文学部教授。
主要著書に『国家身体はアンドロイドの夢を見るか 初期近代イギリス表象文化アーカイヴⅠ』(編著、ありな書房、2001)『演劇都市はパンドラの匣を開けるか 初期近代イギリス表象文化アーカイヴⅡ』(共著、ありな書房、2002)『シェイクスピア 世紀を超えて』(共著、研究社、2002)『イギリス革命論の軌跡』(共著、蒼天社出版、2005)『〈帝国〉化するイギリス 一七世紀の商業社会と文化の諸相』(共著、彩流社、2006)などがある。
▼小野功生
現在、フェリス女学院大学文学部教授。
主要著訳書に『挑発するミルトン 「パラダイム・ロスト」と現代批評』(共著、彩流社、1995)『クリストファー・ヒル評論集(全4巻)』(共訳、法政大学出版局、1991~1999)『イギリス革命論の軌跡 ヒルとトレヴァ=ローパー』(共著、蒼天社出版、2005)『十七世紀英文学と戦争』(共著、金星堂、2006)『〈帝国〉化するイギリス 一七世紀の商業社会と文化の諸相』(共編著、彩流社、2006)などがある。
▼圓月勝博
現在、同志社大学文学部教授。
主要著訳書に『挑発するミルトン 「パラダイス・ロスト」と現代批評』(共著、彩流社、1995)ヒル『クリストファー・ヒル評論集(全4巻)』(共訳、法政大学出版局、1991~1999年)Milton and the Terms of Liberty(共著 D. S. Brewer
内容説明
初期近代イギリスの“食卓談義”から、文学サークルの歴史とそこから生み出された言説の系譜をたどる。
目次
書斎の中のシドニー・サークル―スペンサーの友情伝説を読む
新しき社交空間を求めて―ベン・ジョンソンの“アポロの部屋”前史
ピンダロス的転回―一七世紀イングランドの夭折をめぐる詩学と政治学
共和主義サークルという記号―ロータ・クラブからカーヴズヘッド・クラブへ
身体なき食卓談義―書物愛のプロソポグラフィ
ドルーリー・レインの三頭政治―一八世紀初期ロンドンの劇場をめぐる政治学
食卓談義から紙上の饗宴へ―クラブの文化と一八世紀のアンソロジー
著者等紹介
圓月勝博[エンゲツカツヒロ]
1958年生まれ。同志社大学大学院文学研究科英文学専攻博士前期課程修了。同志社大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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