出版社内容情報
縄文時代から続いてきた御柱祭、大木を切り倒した道具は石か鉄か? 諏訪湖周辺に出土する薙鎌や高師小僧、信州の遺跡と祭と神々の解明を通して日本古代史の真実に迫る!
第1章 御柱祭を科学する――御柱祭は鉄器時代(縄文時代)からの祭!?
1 諏訪大社は縄文鉄器時代の製鉄王国
2 薙鎌の不思議
3 御柱祭と鉄鐸
4 御柱祭と鉄斧
5 風の神・諏訪大社主神
《コラム》越中おわら風の盆
《コラム》諏訪大社御柱祭の幼男児の生贄の真相を哲学する
第2章 御柱祭をもうちょっと科学する
1 製鉄材料のカッテッ鉱(高師小僧)と焚火の温度
2 縄文・鉄器時代
3 縄文時代に製鉄文化があった科学的な可能性
4 科学的に見た縄文古代史への大きな疑問と五つの課題
①巨木文化は縄文時代中期遺跡
②火力温度による貴金属の熔解
③渡来文化技術による古代文化成立説の古代史編年基準への疑問
④天然ガスが新潟でも千葉でも採取でき、秋田では油が湧いている
⑤墳墓は先祖の文化の象徴
《コラム》お盆やお彼岸や年中行事
第3章 信州の遺跡と祭と神々と鉄器時代
1 諏訪湖周辺製鉄遺跡
2 安曇野の神々(縄文時代中期後半以降)
《コラム》村の外れの道祖神達(三貴神神話と道祖神祭の心理的考察)
3 北信の神々(善光寺如来と守屋柱)
《コラム》時代考証
《コラム》私の善光寺参り
4 東信の神々と文化
5 南信の祭と文化
第4章 埴輪の用途は?? 埴輪を科学する・そして心理的考察
第5章 東日本に繁栄した縄文後期の鉄刀文化
第6章 三角縁神獣鏡出土統計とルーツを探る
第7章 黄金の国ジパング・金環・東松山市と周辺文化
《コラム》秦の始皇帝墓
《コラム》信州のズラ・図良(ずら)言葉のルーツ
平成一六年、七年に一度の諏訪御柱祭が諏訪の男衆の血を沸かして終わった。御柱祭が縄文時代からの祭だろうと思ったのは未だ私が若い頃だった。各地の歴史の七不思議などに非常に興味を抱き、関連書を読み漁ったものだった。そんな中に諏訪大社の七不思議があった。もっと科学的見地から七不思議を解いてみたい、信州や日本の古代史の不思議をもっと科学的な観点で見れば多くは解けるはずだと興味を持った。平成一六年五月、不思議が詰まった七年に一度の御柱祭がまた巡って来た。
日本には、多くの祭りが各地に古くから延々と伝承されているけれど、その多くの祭りの謂れは祭る人々の心から消え去って形式だけが伝承されている。しかし祭の不思議さは、その形式化した祭を演じた時、人々の感情が高ぶり一団となって「訳やいわれ」よりも「血が湧き、心が高揚」して酒や太鼓の勢いに酔い、古代の祭りのルーツを実感したり、体感したりして納得する。
そうした文化としての〈祭〉を人類の風習・習慣・遺産として延々と地上の皺の中に残してきた人類の智慧の不思議を思う。そして先祖の伝承を延々と受け継いできた彼ら地域住民のエネルギーとプライドに感じ入る。
とりわけ信州には日本一危険な諏訪の御柱祭や、北信の野沢温泉村の道祖神火祭や、南信の霜月祭など様々な古式ゆかしい祭が伝承されている。どの祭も純朴で古き良き情緒があり、その上豪壮で情熱的で、見る人を祭に同化させるエネルギーを発する祭りだ。それらの祭りは奈良時代以降に、その地に何の根拠もなく突然に祭られるようになったのだろうか?。
土の中から掘り起こされる遺物や遺跡は遥か六〇〇〇年も以前からの先祖達の生活を無言で伝えてくれている。それらのメッセージに対し科学的根拠もない多くの間違いのまま、時代を決定付けて後世に伝えてしまうもどかしさ。一市井の筆者が考えてきた“科学的な”諏訪の縄文古代史を、御柱祭と言う特異な祭りにスポットを当て、御柱祭の本質を一度じっくりと皆さんと共に考えてみたいと思う。
ところで、自然界には厳然と存在する科学の法則がある。例えば火力の強さを一定時間維持することで鉄や銅や金銀などの鉱石が溶解する事や縄文土器が焼き上がることなどだ。こういった科学の法則を人類の古代史に当てはめると、人類が営々と築き、科学してきた文化があり、人知では動かし難い自然界の中にある科学の法則によって、無作為で多くの文化が生まれ、その新しい変化の本質を究明し、生活に活かし発展させてきた縄文人や人類の好奇心に驚く。中でも火力の持つ科学的変化を利用してきた縄文人達の知的興味には目を見張るものがある。
古代史を科学的に見ようとする場合、例えば鉄(褐鉄鉱)は摂氏四〇〇度程度の低火力温度で熔け始め、五〇〇度前後で鎔解が止り、八〇〇度前後から再び熔解が始まるという。また鉱石に不純物が混じると、鉱物の熔解温度が下がるという不思議な法則もある。銅鉱石や金鉱石や錫や銀も他の自然界に存在する鉱物などは、火熱温度によってそれぞれ熔解を始める。温度の高低は鉱物によって各々異なるが、加熱により各鉱石は熔解するという自然界の法則が存在することを見逃すわけにはいかない。またそのことを抜きにして人類の古代史は解明できない。そうした自然界の不思議な現象でもたらされたものを縄文古代人は〈神〉と呼び称えた。日本の信仰の原点にある自然の岩石などへの崇拝はここから始まっていると思う。
縄文人達は延々と縄文土器を焼いてきた。その文化は火と土と風を科学し、生活に利用した文化だ。そし紀元前四〇〇〇年頃(六〇〇〇年以前)日本の中心にある信州諏訪地域に縄文土器文化が花開いた。後年、縄文中期の諏訪に繁栄した土器模様を〈水煙土器〉と呼ぶ。一方、新潟地域の同時代の土器様式を〈火炎土器〉という。名付けの謂れは諏訪地域は水煙が渦巻くような模様であり、新潟地域の土器は火がメラメラと燃え上がり野を燃え尽くしていくような模様だからというが妙を得た命名だ。
事実、諏訪の地は諏訪湖を中心に湖に流れ込む幾筋かの川が文化を作り上げて行った水の文化だ。一方、新潟には太古から今も燃え続けている天然ガスが自然の中で高温燃焼する、という天然ガス火力利用文化があった事が推定される。『古事記』に大国主命が越の国のヌナカワ姫と結婚し、遠い古代にヌナカワ姫のいた新潟県(越の国)が重要な位置に有った事がわかる。そのように自然界と共にあった縄文人達は水と火という自然の恵みを土器の中に模様として率直に表した。同じ時代でありながら諏訪と新潟という地域文化の違いをはっきり見ることができる。厳然と存在する自然界の科学の法則とともにあった人類の先祖の足許に、ちょっとメスを入れ日本の超古代史の真実を探ってみた。
本書を推す
千葉大学名誉教授 多湖 輝
私は、若い頃から常識や固定観念を捨てて、新しい視点で物をみつめ直すことを、主張してきました。
先日、日本古代史を研究していらっしゃる百瀬高子さんから思いもかけぬ原稿を送っていただきました。日本古代史など、私とはむろん、無縁の世界なのですが、先生は、私の「発想の転換」や「盲点力」的視点で、日本古代史を見直してみると、思いもよらぬ発見があるとおっしゃいます。なるほど読み進むうちに、古代史を解く発想の中には、「頭の体操」を解くのと共通の面白さが随所に満ちあふれていることが分かり、私は思わず魅き込まれてしまいました。この本には、確かにこれまで難解とされていた古代史を、推理小説を読むような感覚で興味深く読むことが出来、知らぬ間にまったく新しい世界に誘ってくれる魅力があります。
日本古代史の謎に触れ、興味を持つための本として、ぜひ、たくさんの方々に、読んでいただきたいと思います。
内容説明
厳然と存在する自然界の科学の法則とともにあった人類の先祖の足許に、ちょっとメスを入れ日本の超古代史の真実を探ってみた。
目次
第1章 御柱祭を科学する―御柱祭は鉄器時代(縄文時代)から引継がれた祭
第2章 御柱祭をもうちょっと科学する
第3章 信州の遺跡と祭と神々と鉄器時代
第4章 埴輪の用途は??埴輪を科学する
第5章 東日本に繁栄した縄文後期の鉄刀文化
第6章 三角縁神獣鏡のルーツを探る
第7章 黄金の国ジパング・金環・東松山市と周辺文化
著者等紹介
百瀬高子[モモセタカコ]
長野県出身。東京都公務員退職後古代史研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。