内容説明
メッセージアプリの消えない「入力中…」、雨音が聞こえ続けているカーテンの向こう側、授業中に回される小さな折り手紙、少女たちが体験したひと夏の戦慄。「」の姿を視認した時、物語は再び動き始める。『かわいそ笑』『6』に続く、新進ホラー作家・梨の単著第3作目!299の断片が紡ぎ出す、聞こえなかった旋律と戦慄―
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kana
34
端的に言えばホラーな自由律俳句。新感覚で単なる俳句より突き刺さる感じでめっちゃ良きでした。【非常口の明かりに引き寄せられた四つ足の人間がへばりついている】【彼女の死後も「入力中」が消えない】【あの人にはラストオーダー言いに行かないんですか、店長】【いついかなる時でも同接3のライブカメラ】などが特に好き。現代的な、動画配信やメッセージ画面で起きるようなことから夜のプールや隣の部屋の物音などザ怪談ぽい場所でのことまで幅広く、怖いだけでなく切ない余韻を感じたり、リアルな痛みが思い起こされたり、印象も多様でした。2024/03/30
佐倉
16
”じゆうりつ”と当人たちは呼んでいた女学生の手紙のやりとり…というモキュメンタリー的な大枠のみならず、不穏な現代詩集として好きな一冊。かつてヘミングウェイは「小説は最短6単語で書ける」と言ったが、どの一篇も最短のホラー小説といった趣。『茶碗蒸しから海老を探す行為が、感触と温度ともに最も近いといわれている』『その霊障はパイプユニッシュで溶けるから大丈夫』『突然に家族が「あなたのせいじゃない」としか言わなくなった』『賞味期限:瞼の裏に表示』『「脳味噌」という言葉を最初に考えた人が遭遇していた事件』等が印象的。2025/01/27
冬野
8
どこかノスタルジックでゾワッとくる一文や短文を一冊にした本。断片が集まることで何か特定の物事が明らかになる構成というわけではなく、なんとなくの気味悪さを味わう作品なのかな。自分の小中学生の頃の思い出がグワッと引きずり出されるような感覚がありました。あの紙を折って作った手紙を授業中に回す文化、まだあるのかな…。表紙の汚れっぽい印刷が小さい文字だと気づいた時に一番ゾッとした。危うく本をぶん投げるところだった。2024/04/17
たかぴ
6
太田出版さん、頑張って発行したんだろうな。。。 梨さんにホントに自由に書かせたというか。何年か後に再評価されてもおかしくは無いかな。2024/10/26
Ai
6
飯田茂実『一文物語集』を彷彿とさせたが、こちらは連作(句)のように、物語の背景があるようだ。一文に込められた不穏な気配。自死した友人との手紙の交換。2024/10/16
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- 和書
- 涙を売られた少女