内容説明
メッセージアプリの消えない「入力中…」、雨音が聞こえ続けているカーテンの向こう側、授業中に回される小さな折り手紙、少女たちが体験したひと夏の戦慄。「」の姿を視認した時、物語は再び動き始める。『かわいそ笑』『6』に続く、新進ホラー作家・梨の単著第3作目!299の断片が紡ぎ出す、聞こえなかった旋律と戦慄―
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kana
30
端的に言えばホラーな自由律俳句。新感覚で単なる俳句より突き刺さる感じでめっちゃ良きでした。【非常口の明かりに引き寄せられた四つ足の人間がへばりついている】【彼女の死後も「入力中」が消えない】【あの人にはラストオーダー言いに行かないんですか、店長】【いついかなる時でも同接3のライブカメラ】などが特に好き。現代的な、動画配信やメッセージ画面で起きるようなことから夜のプールや隣の部屋の物音などザ怪談ぽい場所でのことまで幅広く、怖いだけでなく切ない余韻を感じたり、リアルな痛みが思い起こされたり、印象も多様でした。2024/03/30
麻耶
5
エモいのか不穏なのか分からない自由律俳句(音数律も韻律もない、ただ慄然とした追悼句?)が並んでいる。赤と黒の文字に分けられているがこれは書いた人間が別ということなのかな?かわいそ(笑)でもそうだったけど折られた手紙とか「あの頃」の女子の文化だなあと思う。一応心中し損ねたみたいな設定があるよう。肌感覚にゾッとする感じの表現があっていい(七夕ゼリーの温度と食感の皮膚とか)。2024/02/21
そうちゃん
5
大好きな梨さん歌集。一句ずつ想像してゾクっとする。よく梨さんが言っている「死より怖い事」が少し見える気がする。2024/02/08
冬野
3
どこかノスタルジックでゾワッとくる一文や短文を一冊にした本。断片が集まることで何か特定の物事が明らかになる構成というわけではなく、なんとなくの気味悪さを味わう作品なのかな。自分の小中学生の頃の思い出がグワッと引きずり出されるような感覚がありました。あの紙を折って作った手紙を授業中に回す文化、まだあるのかな…。表紙の汚れっぽい印刷が小さい文字だと気づいた時に一番ゾッとした。危うく本をぶん投げるところだった。2024/04/17
sasaki_1/700k
2
「299の断片が紡ぎ出す」とは帯の紹介文だが、これだけ見ると作者の既刊2冊(または近年流行のテキスト版Fドキュメンタリ)のような内容を想定しかねない。実際はタイトルどおり「句集」と扱うのが形式的にも(1pに2句程度で余白たっぷりなのも句集なら普通)楽しみ方としても(限られた語数からの想像の広がりを味わう)良いか。枠物語もあるが、あまりストーリーや考察を期待しても充てが外れそう。一見試みが重なる「一行怪談」シリーズはあくまで「物語」を企図しているし、こちらは梨氏お得意のビジュアル的な遊びもあり趣は異なる。2024/03/30