内容説明
「子どもには適切な保育を受ける権利がある」子どもの視点から保育問題をとらえかえし、根本的な処方箋を提案する。当事者だけでなく、これから子どもをもちたいひとも知っておくべき保育の前提がここに。
目次
第1部 日本の保育/イギリスの保育(日本の保育のいま;イギリスの幼児教育改革)
第2部 保育の未来(保育問題は日本の中心;子どもの権利;観念の力と草の根の運動)
著者等紹介
猪熊弘子[イノクマヒロコ]
1965年生まれ。ジャーナリスト、東京都市大学客員准教授。就学前の子どもの福祉や教育、女性や家族の問題を中心に取材・執筆。特に保育制度・政策、保育施設での事故に詳しい
國分功一郎[コクブンコウイチロウ]
1974年生まれ。高崎経済大学准教授。専攻は哲学
ブレイディみかこ[ブレイディミカコ]
1965年生まれ。イギリス・ブライトン在住の保育士、ライター(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゆう。
36
イギリスと日本との比較や哲学的考察、民主主義のあり方を含め「子どもの権利」の視点からわかりやすく述べられています。あらためて子どもへの保育保障の重要性を感じました。なぜ日本の保育は小手先の対策におわれ、また保育者の労働条件が悪いのかも考えることができました。著書のなかで保育所がケア(世話)をするところというとらえ方ではなく教育ととらえなければ保育者の地位や保育そのものが社会的に認められないという趣旨のことも書いてありましたが、その部分には疑問も感じました。でも良書です。2019/05/15
しゅん
13
『社会の抜け道』を読んで「保育」の問題に興味をもったのでこちらも。イギリスと日本の保育制度の比較を中心に、保育をめぐるありとあらゆる問題(場所の劣悪さ、給料の低さ、子どもの権利に対する意識の低さetc)を公に開いていく。胃もたれするほどに容赦なく暗澹とした現状を突きつける。こうした問題を子どもをもたない(僕のような)人間やすでに保育園を卒園した子どもをもつ人間とどう結びつけていくかということがかなり難しいハードルな気がする。個人主義と公共性の接点の取り方は保育以外のトピックでも重要なのではないか。2018/02/25
Masakazu Fujino
6
ジャーナリストの猪熊弘子氏が中心になって、ブレィディみかこ氏と國分功一郎氏と、日本と英国の保育制度・幼児教育について語った本。イギリスの保育園は幼児教育という考えが徹底していて、子どもたちの権利としての教育が徹底している。一方、日本はその点が弱い。単に居場所になっている。ただ、日本の保育園は上もなく下もなく(ベンツで送り迎えされる子も、生活保護家庭の子も)平等に保育を受けられる制度がまだ守られている。近代が創ってきた制度の出発点に立ち返って労働問題や貧困問題を捉え直さないと行けない。バックトウザベーシック2017/09/26
邪馬台国
5
子どもの自己形成に関わる大切な保育。その現場が想像を遥かに越えて危ういという現状に衝撃を受けました。日本の保育が抱える問題はそのまま小中高大と続く教育問題にも繋がっていくと感じました。保育に限らず保護者も子どもも其々の教育機関と関わり向き合う期間はとても少ないこともあり、現場の苦悩は可視化されづらいですね。現場の困窮は政治の力を頼るしかない現状、一向に抜本的改善が行われない現状には悲観的な気持ちにもなってしまいますが、引き続き関心を持っていく事が自分たちにできる第一歩かなと思いました。2019/11/21
Miki Shimizu
5
イギリスと日本の保育園を比較しながら語る本。保育園とか待機児童とか問題になってるけど、預ける大人の都合ばっかりで、子どもにどんな保育を保証するのか、どんな成長を保証するのか、保育所に通う権利とか、子どもの権利という視点が抜け落ちているといわれて、なるほどなーと思った。預ける都合も大事やけど、子どもが幸せに暮らせるような労働環境つくっていけたらいいのになー。2017/09/18