内容説明
通勤こそ近代社会を発展させた原動力。19世紀に生まれ、移動・職業選択の自由をもたらし、都市と生活を激変させた通勤の歴史、現状、未来を考察。「通勤大国」日本をはじめ、世界の通勤事情も網羅。
目次
第1部 通勤の誕生と成長、そして勝利(一日に二度ロンドンへ行った男;郊外の発展;スネークヘッドと美食;自動車の発達;中間地域;山高帽とミニクーパー;二輪は最高)
第2部 粛々と通勤する人々(超満員電車;ロード・レージ―逆上するドライバーたち;移動は喜びなのか?;通勤が日常生活におよぼす影響;流れをコントロールする)
第3部 顔を合わせる時間(仮想通勤;すべては変わる)
著者等紹介
ゲートリー,イアン[ゲートリー,イアン] [Gately,Iain]
香港で育ち、ケンブリッジ大学で法律を学ぶ。ロンドンで金融関係の仕事についたあと、ジャーナリスト、ライターとして活躍。イギリス、サウサンプトン在住
黒川由美[クロカワユミ]
翻訳家。津田塾大学英文学科卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ふろんた
11
通勤片道2時間弱の通勤中毒者として興味深い。駅付近に住宅街が建設されるというのは鉄道創設時からあったようだ。2019/03/15
gecko
8
19世紀のイギリスで蒸気機関車の登場とともに始まった「通勤」という活動は、景観(「郊外」の誕生)や時間の概念を大きく変えながら、人々に好きなところに住む自由、好きなところで働く自由をもたらした。過去・現在の各国の人々の通勤の経験を、ユーモアを交えた筆致で語る一冊。原書は2014年発行。現代では通勤はストレスのもととされる一方で、人々は「移動中に行う活動と移動行為そのもの」にも意義を見出しており、仮にテレワークが普及しても、私たちは他者と身体的・社会的に「顔を合わせる」時間を欲するのではないかと指摘する。2021/03/05
7a
8
在宅ワークイコール働き方改革であるかのような、方法から入ってしまう日本人の悪い癖は感じていた。通勤とはなんぞや。そのデメリットも上げつつ、通勤の歴史即ち近代社会は通勤によって発展してきたこと、通勤が持つ副次的な意味など、かなり広い視点で語っている。テレワークの発達は在宅ワークよりアウトソーシングを進行させるとはまさに仰る通りで感心。高度なデータセンターの維持や開発費が、オフィス勤務のコストを超える日も近いとのこと。日本の通勤のイメージが痴漢と自殺というのも極論過ぎて笑える。2018/05/30
たか
7
欧米諸国の通勤事情と共に日本の通勤事情も紹介されているのでなかなかおもしろい2017/05/13
こたつ
5
イギリスやアメリカでの通勤の誕生から始まり、現在の各国における通勤を俯瞰し、最後は未来の通勤について検討しています。通勤は移動の自由の象徴であるという見方の一方で、通勤そのものは目的たりえず、無くせるのであれば無くした方がよいという見方もまた根強いです。しかし、通勤しなくてもできる仕事というのは、IT化・グローバル化が進展した現在ではアウトソーシングされる危険を意味すると筆者は指摘します。日本の通勤も描かれていましたが、西洋人から見たらこのように捉えられているというのは自覚する必要があると思いました。2016/06/10