内容説明
あるひとを助けるために、別のひとを殺すのは許されるか?思考実験「トロリー問題」の多角的な考察をつうじて、哲学・倫理学が道徳的ジレンマとどう向き合ってきたかを明らかにする。
目次
第1部 哲学と路面電車(チャーチルのジレンマ;分岐線 ほか)
第2部 実験と路面電車(肘掛椅子から腰をあげる;何かおかしい気がする ほか)
第3部 心と脳と路面電車(不合理な動物;ニューロンと戦う ほか)
第4部 トロリーとその批判者(逆火という名の電車;終着駅)
著者等紹介
エドモンズ,デイヴィッド[エドモンズ,デイヴィッド] [Edmonds,David]
1964年生まれ。哲学博士。オックスフォード大学上廣実践倫理センター上級研究員。『フィロソフィー・バイツ』というポッドキャストの共同創設者。BBCで制作したラジオ番組がいくつもの賞を受ける
鬼澤忍[オニザワシノブ]
1963年生まれ。翻訳家。埼玉大学大学院文化科学研究科修士課程修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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りー
39
放っておくと死ぬ5人の男を助けるために1人の男を殺すのが倫理的かどうかなんてはっきり言ってどうでもよくて、やっぱり哲学とか倫理とかってめんどくせーなーと思ってたんだけど、これを読み終えたあとで暴走列車の先にいる桐谷美玲と新垣結衣どっちを助けるかって質問をされて死ぬほど苦悩し、今日僕は哲学に目覚めました。2016/09/18
壱萬参仟縁
22
2014年初出。分岐線のジレンマ。1967年フットが案出(284頁解説)。男は突き飛ばされれば跨線橋から転落、線路に叩きつけられる。巨体に衝突した路面電車は停止するが、5人の命は救われる。5人救われれば、1人の命を奪うことが間違っている場合もある(70頁)。沢山の線路経路が図式されるが、いずれにしても死ぬ人はいるのだろう。ロールズは『正義論』で太った男の運命に関係する反照的均衡という言葉を使った(141頁)。多くの人が列車を分岐線に向けるのは正しいが太った男を殺すのは間違いと考える(157頁)。2015/11/25
みつ
20
約6年ぶりの再読。当時はレビューを記す習慣もなく、内容もうろ覚えだったので改めて詳細にメモをとりながら読む。まず、次の思考実験の場面が示される。①あなたはトロリー路線の転轍手として分岐点に立つ。間もなくトロリーが通る線路には5人が線路上に縛られており、もうひとつ(本来トロリーが通らないはずの)線路には一人が縛られている。あなたは転轍機を操作して、トロリーの行き先を変更すべきか。②トロリーが直進する線路の先に5人が縛られており、その手前の跨線橋にあなたともう一人巨大な男がいる。あなたが線路に飛び込んでも➡️2025/01/18
sayan
11
gaccoで戦争倫理学をオンライン履修した際の推奨図書の1冊・トロリー問題をめぐり非常に刺激的な議論が展開されいて面白かった。特に、ジョシュア・グリーンが「我々は太った男を殺してはいけないと(感じる)、ところが一人より五人を救うほうがよいと(考える)」という箇所は、直感的な表現に腹落ち感が大きかった。p.231で、性善説・性悪説にもつながる議論が様々な哲学者の考え方が展開。それは、トロリー問題のコア部分として映画「enigma」でも描かれるチャーチルの判断をめぐるストーリーが非常にリアリティを持っている。2017/05/29
犬養三千代
10
路面電車が走ってくる。あなたはその先で分岐している線路に横たわる五人と反対側にいる一人が見えている。スイッチがあり電車の方向を換えることができる。さて、あなたはどうしますか? このバリエーションが多数述べられていて現実にもチャーチルの決断、人肉を食べた裁判など。 考えるということの面白さ、人間という生物の不可思議さがよくわかった。人工知能の未来はどうなるのかなぁ。ちょっとため息でした。2018/03/11
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