目次
国家神道と戦前・戦後の日本人―「無宗教」になる前と後(国家神道のいま;神社のパワースポット化と国家主義;日本は無宗教の国か;国家神道の象徴としての「教育勅語」;国家神道を内面化する社会 ほか)
質疑応答(「あなたの宗教は何ですか」;公共空間に宗教が果たす役割;明治維新の前にはなかった国家神道;実存的問題を解く鍵としての宗教;宗教と政治が絡むことの危険性)
著者等紹介
島薗進[シマゾノススム]
1948年、東京に生まれる。東京大学大学院文学部宗教学科教授を経て、上智大学教授、上智大学グリーフケア研究所所長。専攻は、近代日本宗教史、宗教理論研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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YUTAKA T
7
敗戦後、日本を間接統治したGHQは、「神道指令」を出して、国家神道は解体されたというが、実際には天皇の神道儀礼はそのまま残された。そのために国家神道の中心とも言える部分が残された。1年で16日の国民の祝日も、天皇由来の日が多い。元日は天皇の四方拝の日だし、天皇誕生日があり、昭和天皇の誕生日が昭和の日、明治天皇の誕生日が文化の日だし、建国記念の日は神武天皇即位の日、春分の日は春季皇霊祭、秋分の日は秋季皇霊祭、海の日は明治天皇が横浜港に帰着した日、勤労感謝の日は新嘗祭などなど。たしかにそうだよな、と思った。2023/11/08
chang_ume
5
1945年12月「神道指令」によって解体されたかのような国家神道が、戦後に温存された近代天皇制(皇室祭祀)を通じて実は命脈を保っているという議論です。そしてそれが教育勅語復活や靖国参拝さらに神社本庁などの右派的・復古的な政治活動によって、制度的には不可視の環境で盛り返してきているという問題設定。なのですが、国家神道の温存と復活が我々の生活世界にどのような影響を及ぼし得るかという点で、やや問題に対して当事者意識を抱きにくい感触も。国家神道復活のなにが問題なのか、もっと問うてもよかったかなと。2018/01/07
めっかち
3
この講演で司会を務め、解説文も書いている菅孝行氏。この人は反天皇制運動連絡会の人で、今日の我が国でこの上もない左翼活動家。では、島薗進氏は? 宗教が民主主義の基盤であることをしっかりと認識している。欧米におけるキリスト教の役割を島薗氏は正しく理解している。その上で「国家神道を廃止しろとは私は言わないですが、それが国民に抑圧的に作用しないように注意深く見守っていかなきゃいけない」と言う。話してて矛盾を感じないのかな? 結局「右傾化は嫌だなぁ」というのを「国家神道」という言葉で説明しようとしてるだけでは?2023/07/17
mittsko
2
文句なしにすばらしい内容。日本の教養読者層に、教科書として広くたくさん読んでいただきたい、と切に願う。しかも、河合塾新宿校での予備校生向け講演の記録(菅孝行の長い「解説」を含む)なので読みやすいうえ、本文50頁と大変短い。宗教と近代性、宗教と科学、宗教と倫理、宗教と政治、宗教と国家、あるいは日本宗教の近現代史、国家神道と天皇制… こうした主題に少しでも興味があるなら、まずはこの本から手に取られるのがよい、と確信します。ホントに、ホントに多くの人に読まれてほしいです(*'▽')2017/12/23