内容説明
無限から無限へと一様に流れるニュートン的絶対空間・絶対時間と、その計測可能な日常的時空間を一瞬の内に垂直に切り裂き非日常の淵へと連れ出すところの個々に生きられた「こと」としての時間と空間。この根源的に異なる二種類の時間と空間のあり様の謎に迫った精緻な論考集。
目次
対談・中動態という場をめぐって
1 空間―開けとひずみ(飛翔と浮遊のはざまで―現代という解離空間を生きる;私は今ここで、あそこにいる―メルロ=ポンティの身体論と空間論;斉一化された空間にかかる力―統合失調症と広汎性発達障害の狭間で;無境の空間)
2 時のはざま―クロノスとカイロス(精神病の深度と複数の時間性―アンテ・フェストゥム再考;賭博の時間;トラウマの時間論;時に思索)
著者等紹介
木村敏[キムラビン]
1931年生まれ。京都大学名誉教授。河合文化教育研究所主任研究員・所長。精神病理学
野家啓一[ノエケイイチ]
1949年生まれ。東北大学大学院文学研究科教授。現代哲学、科学哲学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ルンブマ
4
なんらかの社会(=共同体)を形成した時、そこには社会の《内部》、《外部》という二項対立がどうしてもできてしまう。 ベルクソンが言うように、社会は「少数の個人たちを包含し、その他すべての個人を排除することを本質とする」。また彼は地上に具現される社会すべてを「閉じた社会」として批判した。 「閉じていない」社会を構想しようとしても、現実の空間は「閉じた空間」しかない。どんな空間にも境界は必ず存在する。2019/04/17
ポカホンタス
3
時間論を考えるために、いくつかの論文を読んだ。野間先生のコントラフェストゥム概念を確認し、深尾先生のフェストゥム階層論に膝をうち、内海先生のトラウマ論の鮮やかさに感銘した。大いにヒントをいただいた。2016/04/07