感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あや
23
敬愛する歌人の方にすすめられて読んだ。著者は短歌人所属。2024年9月刊。胃に病が見つかり闘病生活が始まる。日付をつけて詠まれる闘病に作品に引き込まれるように読んだ。もしも自分に命にかかわる病気であることを告げられたら?ということを考えながら読んだ。帯文が東直子さん。 くれなゐの薔薇の一輪胃の底に咲かせたるわが戒めの神/煮浸しのハクサイ光り味噌汁のカボチャあかるく身ぬちを灯す/体幹は薄れ消えゆくものと知る術後立ち漕ぎできぬ自転車/実は胃をとつちまつたと親に告げあおぞら透くる八月に入る2025/06/08
yumicomachi
3
いのちに関わる病と向き合う歌人のことばは、ひとこととしておろそかに読めない静かな迫力をたたえている。〈人生が不意にわが胃を取り除き生きる速度を思ひ直せと〉〈にくたいがわれを去りゆく日のための心を花に移すれんしふ〉〈ちはやぶる神の除草の戯れに多分ぢいぢになれないだらう〉術後わずか74日で駅伝を走る「胃なしランナー」であり、登山もする意欲に驚かされる歌もあった。〈雲海に湯浴みしてをる山々と心合わせてゆるりと登る〉。胃に腫瘍が見つかってからの一年間に詠んだ歌をまとめた歌集。帯文・東直子。2024年9月2日発行。2024/09/15