内容説明
第十歌集。二〇一七年九月から二〇二〇年五月までの四七二首。
目次
人形
昨日
ポリス
聖者のレッスン
父かも知れず
再び愛の犬
春の雪
白鳥
戀ごろも
六角〔ほか〕
著者等紹介
水原紫苑[ミズハラシオン]
1959年、横浜生まれ。春日井建に師事。歌集に『びあんか』『うたうら』など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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chisarunn
9
何十年ぶりだろうか。「耽美」を標榜する雑誌に和歌を載せておられた頃に知り、そののちは「うたものがたり」などは読んでいたが肝心の和歌はご無沙汰していた。美しい日本語、巧みな語句使いは変わらず素晴らしい。あるていど古典や文学の素養がないとわからない歌も多く、ああこれはあれ、と思い至る度にイメージは広がるしプライドをくすぐられる。(やっすいプライドだが)歌集を(これが十集目らしい)遡ってみようか。2021/07/23
てくてく
7
代替わり、死別した家族や愛犬、自らの老いなどを詠んだ歌が印象的だった。フランス文学と日本の古典をミックスさせた歌なども、自分がこういう歌を詠むことはできないなという意味でも参考になった。2021/03/09
あや
7
こちらもご家族を詠んだ歌に胸を打たれた。愛犬の死を詠んだ歌は他人事とは思えなかった。私の読解力不足によりあと何度も読み返さなければこの歌集の核の部分にはまだ触れ得ていないという自信だけは無駄にある。水原紫苑さんの最新歌集が読めるという幸福に浸っている。過去の歌集も読み返したいし不所持の歌集を買い集めたい。「えぴすとれー」も所持しているけど1回読んだきりなのでまた読み返したい。素晴らしい歌集をありがとうございます。タイトルはマラルメの詩の一節よりとのこと。2020/10/09
yumicomachi
6
文語旧仮名遣い、しかも漢字は旧体字を用いた472首は、古今東西の神話や文学、哲学の言葉やイメージも取り入れて絢爛たる言語美の世界を築いているが、美しいだけではない。父母への愛憎は日本への愛憎と分かち難く歌われ、天皇制への批評や戦争への怒りも鋭い。亡き愛犬さくらへの思いも深く印象的に詠まれている。〈みづからを追ひつめてゆく愚かさは四頭立ての馬車にて来たる〉〈鳥歩む春を生きつつ日本語を超え得ざること怒りのごとし〉〈亡き犬は虹と想へば水打ちて日々逢はむかなわれもまた虹〉。2020年8月15日発行の著者第十歌集。2023/07/02
rinakko
5
〈海のごとき無知を抱(いだ)きてわがいのち果てむかなしもかもめは書物〉〈われに戀、世界に恐怖いまだ失せず薔薇の棘のみ食(たう)ぶる羊〉〈林檎の木搖るる地球に捨てられしなきがらのわれ死を夢見たり〉〈こはれゆくわたくしの手にくちづけをさなくば遠きアヴィニョンの星を〉〈神々はくるしまざれば存在に非ずとおもふ幽寂の春〉〈さくら紅葉(もみぢ)ほのかにわれをおもひいでよ右大臣實朝いまだ在る秋〉〈宇宙の死われの死薔薇の死の重さ恍惚としてはかりがたしも〉〈海を見し薔薇は嘔吐す孤獨なる少年の蒼きつばさの上に〉2022/12/30
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