内容説明
新たな仕事に打ち込んだ東京、日々遠くなるアブダビの記憶、そして震災によって深く傷ついてしまった故郷、福島。空間と時間を往還しながら齋藤芳生がつかみ出した、祖父母の生き様―。『桃花水を待つ』から4年、2010年~2014年の386首を収め、力強く風土を問う渾身の第2歌集。
目次
1(帆翔;連翹の枝;墜ちる郷土史 ほか)
2(春の女神;早稲田鶴巻町;ダーウィンフィンチ ほか)
3(ふきのとう;貨幣博物館;千の小鳥 ほか)
著者等紹介
齋藤芳生[サイトウヨシキ]
昭和52年福島県福島市生まれ。平成11年歌林の会入会。平成19年第53回角川短歌賞受賞。平成20年かりん賞受賞。平成22年歌集『桃花水を待つ』刊行。平成23年第17回日本歌人クラブ新人賞受賞。現代歌人協会会員。日本歌人クラブ会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kaizen@名古屋de朝活読書会
35
#短歌 p9 「高線量」声響きつつ春泥も汚泥も袋に詰められて臭う p12 放射性物質沈んでいるだろう溝の雨水を猫が飲む、鳥も飲む p15 「忍耐強い日本人」ではないけれど母は給水に並ぶ連日 p16 空振りの緊急地震速報の不協和音に冷める豚汁 p18 ふるさとは霧雨の中私を抱いてしんしんと泣き給いけり p19 チョウトンボま白き水の上をゆきあなたの声もたちまちに消ゆ2018/06/26
Kaoru Murata
5
震災詠はいろいろある。震災ののち、就職のため上京した斎藤さんは郷里の福島を一時離れ、そして戻ってきた。いろいろ思いめぐらすところがあったはずである。/紙飛行機のような軽さに燕落つふるさとの窓すべて閉ざされ/除染のため草刈り終えし晴天に母ざぶざぶと湯を浴びて泣く/沈丁花(じんちょう)の香りどこまでもついて来るふるさとありき帰途を歩めば/目を閉じて数うべし雨に傷みつつ濃く匂いいる梔子の花/湖の対岸に太き虹かかり近づけば消えてしまう祖父たち/黒く重く阿武隈川は流れゆく吹雪にしびれいる福島を2015/09/20
sa-ki
5
原発事故直後の様子を思い出させる歌が多かった。そして、3年経った今もまだ除染作業は終わっていない現実。福島に住む者の思いを代弁してくれる歌は残しておかなければいけないと感じた。2014/10/26