出版社内容情報
遥は中学一年生。美少女の姉にコンプレックスを抱き、毎日の生活にはどことなく居心地の悪さを感じていた。美術部に入った遥は、首筋のきれいな先輩に惹かれる。そして絵に描いた夢の世界に移動する、奇妙な体験をする。そこは四人の魔女が国を守る、楽園のような王国アウレリアだった。そこで遥は、瞳の美しいユニコーンと出会い、自分が一人の魔女の嫉妬によって追放された魔女、「花の司エリン」だと知らされる。楽園のはずの王国は、今年、予言の災いの年を迎えていた――。遥は自信と魔力を取り戻し、王国のために戦うのか。先輩・蒼汰のいる、美咲中学に戻るのか。二つの「現実の世界」と二つの恋に揺れる少女を描いた、異色のファンタジー。
内容説明
わたしは遥。わたしはエリン。スケッチブックに描かれたのは、もう一つの「現実の世界」?アウレリア王国のために戦うのか。美咲中学にもどるのか。遥の決断は?
著者等紹介
小森香折[コモリカオリ]
東京都生まれ。ちゅうでん児童文学賞大賞、新美南吉児童文学賞などを受賞
さとうゆうすけ[サトウユウスケ]
岐阜県生まれ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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鳩羽
4
幼い頃に絵の中に入ったことがあるハルカ。不思議な世界に行く、同じ夢を見るようになる。中学に進学し、家族や学校で居場所がないと感じるようになったハルカは、楽園のように美しい夢の世界、アウレリアに呼ばれるが、そこは夢魔の侵入により滅びが迫っていた。…文量に対して盛り込みすぎではという心配は杞憂で、細かな視点の切り替えも、世界観の単純さも気にならずに読めた。遥の悩みがある意味普遍的で、異世界の方も単純だからこそ、すっきりとした構造の物語になったのかもしれない。骨太な絵もよく、ファンタジーの楽しみを深めてくれる。2025/03/09
史
2
幻想と現代が入り乱れたファンタジー。後ろ向きの青春真っ只中の少女が妄想空想幻想の中と交錯し、そして世界と己を動かしていく。序盤の少女が転移していない部分は少し読みづらい部分はあれけれども、しかしそのことで世界の濃さがよく味わえるものでございます。それでいて現代は現代で思春期特有の重さを描いているのもグッド。面白いのが何者になれないと嘆いたけれども、いざ何者かになるとそれはそれで苦労するという部分。どんな世界でも人間は単純じゃないということですかねえ。中々味わい深いものがあります。好きですねぇ。2025/02/11
風池
1
うーむ、私の集中力がたりないからか、絵の中の話の想像がしにくくて、入り込めなかった。リアル部分はよきなある、劣等感に苦しむ話で。共感できる子にはすんなりよめるかな。2025/02/03
gero
0
ニコルの塔;はてしない物語;世界の終わりとハードボイルドワンダーランド;絵;劣等感 幼少期に絵に入り込めたハルカは劣等感まみれの中学生になっていました。しかし美術部の活動を通して異世界を幻視し、あっち側に近づくことで自分を取り戻していきます。物語が本質的に逃避だとしても天才ハルカによる命がけの逃避を見せられると感動します。ところで本作は前半の完璧さと後半の理に落ちてしまったギャップがすさまじい傑作幻想小説「ニコルの塔」のリベンジにも見えます。絵、黒い鳥、箱庭、転生など似たモチーフが頻出します。2025/03/21