内容説明
家では、なんでもすきなものをかいたが、学校では、かきなさい、といわれたものをかいた。戦車をかいた。戦争をかいた。教わったことに何の疑問ももたなかった。やがて、教わらないこともあると知った。第二次世界大戦後、冷戦時代のチェコスロバキア。「鉄のカーテン」に閉ざされたきびしい支配のもとで、悩み、成長し、夢を追いかけたピーター・シスの自伝的絵本。2008年コールデコット・オナーブック受賞。
著者等紹介
シス,ピーター[シス,ピーター][S´is,Peter]
1949年チェコスロバキアのブルノに生まれ、プラハで育つ。プラハの美術工芸学校と、ロンドンの王立美術大学で絵画と映画制作を学ぶ。1984年、アメリカ合衆国に移住。コールデコット・オナーブックの『星の使者』(徳間書店)、ボローニャ国際児童図書展ノンフィクション大賞の『生命の樹』(徳間書店)ほか受賞歴多数。『かべ』も2008年のコールデコット・オナーブックを受賞している
福本友美子[フクモトユミコ]
多数の訳書がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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どんぐり
78
表1は星マークに囲まれた壁の中で太鼓を叩く子ども、表4は共産主義のシンボルマークの赤い星。冷戦時代のチェコスロバキアで育ったシスは、物心ついてから絵を描くのが好きだった。家では、なんでも好きなものをかき、学校では「かきなさい」といわれたものをかく生活。学校にあがる頃、この国はソビエト連邦の共産党体制に組み込まれた。戦車、戦争、プラハの春、そして鉄のカーテンはおりる。本書は壁のなかで何が行われ、どう過ごし、自由を求めていったかを示すシスの自伝的絵本。2023/07/08
らぱん
67
著者はアメリカに住む絵本作家で、1949年に旧チェコスロバキア第二の都市ブルノに生まれた。自伝的作品で「鉄のカーテン」から「プラハの春」を経た「ベルリンの壁崩壊」までを描く。 線描でびっしりと描き込まれた壁の内側での「普通」の暮らしは、主人公の年齢が上がるにつれ少しずつわかってくる。大人たちの内緒話は叔父が連行されたということだ。日記形式のテキストがあり、枠外に当時描かれた絵がコラージュされる。違和感、閉塞感、絶望、希望、夢、失望、自由。 壁の内側で聴こえたロックンロール。表現できることの自由を考える。2020/01/27
chimako
49
【ライオンズクラブより】作者のピーター•シス氏はチェコスロバキア出身。言われたとおりに生きてきた(もちろん絵を描くことも)子ども時代。冷戦のさなか[鉄のカーテン]に閉ざされながらも、大人になっていく。悩み、考え、夢を描きながら。これはピーター氏の自伝的絵本であると同時に世界情勢と自国の歴史が描かれている。所々にある氏の日記の抜粋はその当時何を考え何をしていたのか、生き生きとした生活が感じられる。絵本の最後にはこうある。「時には夢がかなうこともある。1989年11月9日、ベルリンのかべ崩壊。」2014/06/30
小夜風
33
【図書館】冷戦時代の「鉄のカーテン」に閉ざされたチェコスロバキアで育った作者の自伝的絵本。何もかもが抑制され管理され検閲される世界。ふき流しがどっちから吹く風にたなびいているのかさえ、問題になる世界。ペレストロイカやベルリンの壁崩壊の時、自分は丁度中学高校だったので、学校でいろいろ教わったはずですが、この絵本は本当に判り易く、息が詰まる緊迫感が伝わってきました。「絵を描きたかったからさ」という言葉が胸に迫ります。2014/07/10
ふう
28
ピーター・シスの絵本、その1。秘密警察に怯えた日々を描いたモノトーンに赤の色遣い。優しい色の羽をつけた自転車で自由に向かって夜空を飛ぶ姿が印象的。2023/10/23