内容説明
アウシュヴィッツの生存者、ヴラデックの体験記録。息子のアート・スピーゲルマンがマンガに書き起こした『マウス』と『マウス2』を一体化さた“完全版”。
著者等紹介
スピーゲルマン,アート[スピーゲルマン,アート] [Spiegelman,Art]
1948年、ストックホルム生まれ。マンガ家。『ザ・ニューヨーカー』をはじめとする雑誌で活躍している。1980年代、国際的に有名なアヴァンギャルド・コミックスとグラフィックスの雑誌『RAW』の創刊・編集を手掛け、「マウス」を連載。1992年、『マウス』でピューリッツァー賞受賞。さらにグッゲンハイム・フェロー、全米批評家協会へのノミネートなど、数々の賞に輝き、国内外の美術館やギャラリーで作品展が開催されてきた。2004年、同時多発テロの体験を描いた『消えたタワーの影のなかで』(小野耕世訳、岩波書店)を発表。ニューヨーク在住
小野耕世[オノコウセイ]
1939年、東京生まれ。日本における海外コミックスの翻訳および研究、紹介の第一人者で、長年の活動が認められ、2006年、第10回手塚治虫文化賞特別賞受賞。2014年に第18回文化庁メディア芸術祭功労賞(マンガ部門)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
80
アウシュヴィッツを生きのびたポーランド出身の父親の体験をもとにしたグラフィックノベル。第1部:私の父は歴史の血を流した(1930年代半ば~1944年冬)=原著1986年刊、第2部:そしてここから私の苦難は始まった(マウスヴィッツからキャッツキルズとその彼方へ)=原著1991年刊、を合わせた完全版。父親ヴラデック(1906-1982)、母親アンジャ(1912-1968)の苦難の道と、親族の多くがホロコーストの犠牲になって消えていく。→2023/10/15
かんやん
28
「お前の友達だと? 友達同士を部屋にとじこめ、一週間食べ物がなかったとしたら…そしたら、友達とは何かお前にもわかるさ」アウシュヴィッツのサバイバーである父の体験を漫画化しようとする息子の葛藤。「想像するのも恐ろしく思える」この葛藤がなければ嘘だろう。平凡な日常の現在と、この世の地獄を体験した父の過去の対比が絶妙だ。迫害と虐殺が、ユダヤ人はネズミ、ポーランド人は豚、ドイツ人はネコの姿を借りて寓話風に描かれている。とてもヒトの姿では…。死なせてくれと泣き叫ぶ妻に「生きるために戦うんだ! 私にはお前が必要だ!」2022/08/19
Miho
9
タイトル通り、アウシュビッツを生きのびた父のほぼ一生を描いている。その父は聖人でもないし、なんなら息子からみたら毒親?生存者を美化せずに生々しくうつしているからこそ、処刑者が無差別に選ばれたことが伝わる。悪い人だから善い人だからという選別は、この時代のユダヤ人には一切関係ない。息子からみれば、父は金にうるさいユダヤ人のカリカチュア同然で、それをありのまま読者に伝えるべきかを葛藤する場面がそのまま描かれている。でも、この父の場合は、やはり裕福さがものをいったのではと思った。2021/12/27
チェアー
7
アウシュヴィッツから奇跡的に生還した父のことを、被害者として描くのではなく、一人の普通の人間の人生に起こったこととして描いているのがすごい。まんがにしている自分のことも客観視し、そもそもまんがにすべきなのか、自分に彼の苦しみを表現できるのか悩む。父も人間として完璧にはほど遠い。そんな普通の人が虐殺されていったのが、アウシュヴィッツだったのだ。2021/07/02
minamimi
4
年明け早々に重い本を選んだものだけど、お正月が厳かな雰囲気で過ごせたような気もする。取り返しのつかないこと、という言葉が思い浮かぶ。2022/01/02