内容説明
家父長制に抗う女たちがもちいたものこそ、“ゴシック”の戦術だったのではないか。メアリ・シェリー、アン・ラドクリフ、メアリ・ウルストンクラフト、ウィリアム・ゴドウィン、ロバート・マチューリン、エミリー・ブロンテ、シェリダン・レ・ファニュらゴシック作家たちの作品を読み解く先に見えるものとは―。
目次
第1章 ラドクリフ『ユドルフォの謎』―生気論と空想のエンパワメント
第2章 ラドクリフ『イタリアの惨劇』―人権侵害に抗する
第3章 ゴシックにおけるヒロイン像―ウルストンクラフトのフェミニズム
第4章 ゴドウィンのゴシック小説―理性主義と感受性のあわい
第5章 シェリー『フランケンシュタイン』―バラッドに吹き込む精気
第6章 マチューリン『放浪者メルモス』―家父長的な結婚を問う
第7章 ブロンテ『嵐が丘』―魂の生理学、感情の神学
第8章 ヴァンパイア文学から#MeTooまで―“バックラッシュ”に抵抗する
著者等紹介
小川公代[オガワキミヨ]
1972年、和歌山県生まれ。上智大学外国語学部教授。ケンブリッジ大学政治社会学部卒業。グラスゴー大学博士課程修了(Ph.D.)。専門は、ロマン主義文学、および医学史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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rinakko
13
19世紀におけるゴシック小説が果たした役割を読み解く、“戦術”という切り口が頗る面白かった。フランス革命、バラッド的テーマの流行、当時の自己保存の思想…などが重なって生まれた特異なジャンルが、新しいヒロイン像を描くことで、家父長的な文化に異議を唱えたり女性解放のテーマを推し進めることになっていく。『ユドルフォの謎』の想像力と空想力の件、『放浪者メルモス』にある結婚というメタファー、『嵐が丘』の「内なる神」という思想、マイノリティ性を抱える人たちのヴァンパイア物語…など、「なるほど!」と頷きまくりだった。2024/04/02
六花
1
興味深い内容…なんだけど若干文章が読みにくい…多分英語での論文形式なんだと思う。先に新出単語を提示してあとから説明開示していく感じが2024/12/12
mirun
1
ゴシック小説の分析を通じて、ゴシックのもつカウンター性と女性/クィアに対するエンパワメントを見いだしていく内容。 ウルストンクラフトとゴドウィン夫妻からメアリー・シェリーに受け継がれた急進性と医学言説、フェミサイドとバラッド・リヴァイヴァルとしての『フランケンシュタイン』の話が特に面白かった。 現在も同じく、女性やマイノリティとして社会を生きる人々による手段としての文学の有効さを考える点でも良い一冊だと思われる。2024/10/21
をとめ
0
図書館2024/12/27