内容説明
こどもとおとなの切ない境界線を浮かび上がらせる。追憶と再生の、12の物語。
著者等紹介
阿部公彦[アベマサヒコ]
1966年生まれ。東京大学文学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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紅はこべ
116
平石貴樹編のアメリカ文学編を読んでからだいぶ時間が経ってしまった。読んだことのある作家はイシグロだけ。私、現代文学に疎いな。木に恋した女性の「五月」が一番印象に残った。彼女の恋人にとっては、何てことない普通の木。恋ってそういうもの。「敷物」「奇妙な召命」「はじめての懺悔」も良かった。私はアイルランド文学の方がより好みに合うみたい。しみじみっていうのとはちょっと違うかな。2020/02/03
藤月はな(灯れ松明の火)
59
冒頭の物語を欲する・欲さない時の指摘に頷いてしまう。更にはお久しぶりのフラック・オコナー作品や2010年代後半で日本でも単行本が出始めたアリ・スミス作品なども収録されていたのでやはり、アンソロジーは侮れない。「誰かに話した方がいい」の「心配している」と言いながらも自分の事しか話さない大人への「なんでこの人、私になんか話しているの?」という白けた思いが身に覚えがありすぎる。同時に大人になった自分も同じことしているかもという疑念で羞恥に身を悶えるのであった。「敷物」は「情けは人の為ならず」が誤用された意味で2025/01/30
くさてる
19
アンソロジー。既読作家からまったく知らない作家までいろいろ。粒揃いの内容で楽しめました。「奇妙な召命」「ドイツから来た子」「はじめての懺悔」「ホームシック産業」が印象に残りましたが、他の作品もそれぞれに個性があって似通った作品はなく、読後になにかが残るものばかり。2025/04/15
マツユキ
15
『しみじみ読むアメリカ文学』が面白かったので、こちらも。読んだことがあるのはカズオ・イシグロだけなので、読めるかな?と思いましたが、意外なほど、するする読めました。若い主人公の作品が印象に残っていて、母の友人に会う『誰かに話した方がいい』、駆け落ちした若い男女『トンネル』、木に恋する『五月』、少年少女と宗教『奇妙な召命』『はじめての懺悔』が面白かったです。気になった作者の別の本を探しますが、なかなか難しい。『トンネル』のグレアム・スウィフトと、『はじめての懺悔』のフランク・オコナーは、手に入りそう。2022/08/26
miyu
15
グレアム・スウィフト、フランク・オコナーなど既読の作家たちの中でもっとも心に残ったのは、桂冠詩人アンドリュー・モーションの「屋根裏部屋で」だった。彼が16歳の時に交通事故に遭い昏睡状態が続いた母親に対する一篇の短い詩。限られた字数の中でこれほどに鮮やかに普遍的な心の描写をしてしまうとは。日頃から全くといってよいほど詩を理解しない私でさえも、この静かでそれでいて確固たる彼の囁きにとらわれてしまった。シェイマス・ヒーニー「清算」、エドナ・オブライエン「敷物」、ロン・バトリン「ドイツから来た子」あたりも好み。2014/09/03