内容説明
舞台は19世紀末から20世紀初頭のニューヨークやテキサス。名も無き庶民の悲喜こもごもが時空を超えて語り継がれる…。初訳14編を含む厳選19編。
著者等紹介
清水武雄[シミズタケオ]
群馬大学・大学院教授(教育学部英語教育講座)アメリカ文学専攻
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感想・レビュー
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あたびー
40
永らく昔々の新潮文庫版ばかり読んでいたので、全部初読みだった。うれしい。Oヘンリーの作品にはいくつかのパターンがあることが、年を重ねて分かってきた。運命に翻弄される人々が小さな幸せをつかむ心温まる話。痛快などんでん返しでニヤリとさせられる話。そしていかにもアメリカ風なコミックやお笑い映画を思わせる饒舌な語り口に彩られた話。この本にもそう言った小さな物語が19編収められている。訳者は「群馬英米文学談話会」と言う群馬大学の研究室を母体とするサークル。ちょっと用語に首をかしげたくなる部分もあったが読みやすかった2021/10/14
帽子を編みます
33
群馬英米文学談話会の翻訳短編集です。丁寧に訳されています。19編のうち本邦初訳が14編。一応の解決がされても謎が残る話が多い印象でした。解説に19世紀から20世紀初めにかけての1ドルが現在の20ドルに相当するという情報が載っていました。あの話、この話、実感がともないます。実は、英文で読んだアムネジアの話があります。省略されていた部分があったのに気付き、白薔薇の謎があり、まだ解決していない気がします。昔、寝る前に読んでいた習慣なのか面白いのに三編読むとすこやかな眠気がやって来て…、こんな読書もいいものです。2020/10/04
詩歌
21
1900年前後の米国、遠まわしの表現が上品とされた時代のはっとする一瞬をまとめた短編集。相占い師の慧眼には鳥肌が立つほどだし、ヒポポタマスは暖かな謎、クスリと笑う瞬間もあります。素直に喜びを分かち合う自分と、皮肉に頬を歪める自分が同時に存在します。よくよく考えると、彼らが暮らす社会は気持ち悪い世界だって事に気が付いていない、もしかすると知らないのです。このどうしようもない寂しさや頼りなさが、やわやわと光っているように感じられました。2015/09/14
mizuha
18
19編のうち14編が初訳(2005年初版)という贅沢な短編集。よく知られた数編を、子ども向けの甘い翻訳で読んだだけの私は、まさしく目から鱗が落ちる思いがした。歯切れの良い語り口で、庶民的でありながらも、どこか都会的で洗練されていると感じるのは、翻訳の妙があったにせよ、やはり原文の持つ力なのだろう。最後に収められたら「脈を拝見」は、オー・ヘンリーが没した翌月に雑誌掲載されたという短編。解説を読んだ後の再読も楽しみだと思える程、新鮮だった。2014/09/07
新天地
7
収録作品は年代も初期から晩年まであり、本邦初の翻訳作品もあってバラエティ豊か。しかし質の差も結構あったの様な…。好きな話は占いに導かれて消えた恋人を探す「トービンの手相」が物語の余白が多くてそこを想像するのが楽しい。他には妙に深刻だが種明かしの面白い「ヴィヴィエンヌ」に、見栄を張るとロクなことがない「サボテン」。解説でも言われているが作者は物語に描かれない部分、余白を作っておいて読者に自由に想像させるらしいが、そのためか自分の解釈と解説にある解釈がだいぶ違うものになった。2019/04/30
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