内容説明
記号論者の先駆け、ロシアの文学者ミハエル・バフチンの思想の全貌に迫る一冊!詩学、文芸評論に多大なる影響をあたえ、生成する対話を軸に、ドストエフスキーとラブレーを読み解き、テクストの「ポリフォニー」に着目するバフチンの新たな側面に迫る、11名の俊英による論文集。
目次
第1章 「すべてはこれがどうなるかにかかっているのだ」―現実の出来事、わくわくするドラマ、学問上のコメディとしてのミハイル・バフチンの学位論文口頭試問
第2章 小説だけがすべてではない:バフチン、詩、真理、神
第3章 転覆せる民衆:カーニヴァル、ヒステリー、女性のテキスト
第4章 現象学から対話へ:マックス・シェーラーの現象学の伝統『行為の哲学によせて』から『ドストエフスキー研究』へいたるバフチンの展開
第5章 バフチンと読者
第6章 対話的転覆:バフチン、小説、ガートルード・スタイン
第7章 バフチンと言語の歴史
第8章 身体問題:バフチン、サルトル、バルトにおける自己と他者
第9章 バフチン/ショーペンハウアー/クンデラ
第10章 バフチンサークルの批判的作業:新書誌的試論
著者等紹介
宍戸通庸[シシドミチヤス]
東京都生まれ。上智大学文学部英文学科卒業、国際基督教大学大学院教育学研究科博士前期課程修了、ミシガン大学大学院言語学博士課程修了(Ph.D)、1981~82年、フルブライト招聘教授(アラバマ大学)、現在、摂南大学大学院国際言語文化研究科教授
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感想・レビュー
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ルートビッチ先輩
1
ソ連崩壊後に開放された新たな資料を受け、バフチン<像>なるものが揺らいだ。バフチンという一人の人間によってテクストは作られたわけではなく(代筆、剽窃)、またバフチンという一人の人間によって書かれたものであった(脱神秘化)。主にそうした情勢で出版されたものの、これは第二版であり、第一版から掲載されているものもあり、バフチンの理論が文化理論に転用された際の単純化を戒める論調が多い。特定の文化に適用される際に明らかな正負の対立が逆転することではなく、バフチンの指向はあくまでもダイアロジズムにあった。2015/09/19