出版社内容情報
イギリス怪奇小説のアンソロジーの目次を見ていると、女性作家の名が多いのに気づきます。ゴシック小説の時代から女性作家は活躍していますが、日本では、M・R・ジェイムズやE・F・ベンスンら男性作家に比べ、女性作家は訳書も少なく、まだあまり知られていません。そこで本書では、『フランケンシュタイン』で後世に多大な影響を与えたメアリー・シェリーから、『レベッカ』のダフネ・デュ・モーリアまで、10人の作家の中短編を集めました。幽霊、猟奇残虐事件、オカルト探偵、奇蹟……多彩な物語とともに、彼女たちの名を記憶にとどめていただけますよう。
著者等紹介
牧原勝志[マキハラカツシ]
『幻想と怪奇』編集室長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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翠埜もぐら
21
メアリ・シェリーを筆頭とする、イギリスの女性作家の「怪談」集。短編なので込み入った話はなくどれも因果関係が割とはっきりしていて読み易かったです。ダフネ・デュ・モーリアの「秘密の池」が子供視点のため、ファンタジーとも怪異譚ともとれて、ラストにほっとするべきなのか嘆くべきなのか。イギリスの作家は多かれ少なかれ「怪奇小説」を書くもののようで、アガサ・クリスティーが怪奇小説を書いているって知りませんでした。慌てて本を買ってきてしまいましたよ。2022/12/31
Ribes triste
15
デュモーリアの未読短編にひかれて読み始めたのですが、どれも読みごたえのある充実した短編集でした。どの作品もドラマティックでエモーショナル。怪談といってもファンタジー、SF、様々な要素が詰め込まれ、読み終えてしまうのがもったいないくらい楽しかったです。読んでみたい作家の本が増えました。2023/02/28
timeturner
7
女性作家と聞いて想像するゴシック・ロマンス系だけでなく、魔術、オカルト、猟奇、伝承など広範囲にわたるテーマの作品が選ばれ、背景となる社会状況にも興味を惹かれる。「女性だから」ではなく「この作家だから」「この時代だから」書けたものばかりだ。井上雅彦さんの「メアリーの破片」を読んで、メアリー・シェリー自身の特異な生い立ちや業績って小説の題材にぴったりだってことにに気づかされた。ホームズ並みとは言わないまでも、無数のパスティーシュが書かれていても不思議ではないのにな。2022/12/09
グーグー
6
メアリー・シェリーを筆頭にイギリス女性作家の中短編をあつめた怪談集。アメリア・B・エドワーズ「あれは錯覚だったのか?」の悲しい顛末。マージョリー・ボウエン「擦り切れた絹布」の夫の狂気の恐ろしさ。ダフネ・デ・モーリア「秘密の池」の少女の幻想の先には……。エッセイ「二百年後のメアリー・シェリー」で言及されている映画『メアリーの総て』を見れば彼女のことがもう少しわかるかな?2023/09/18
5〇5
5
英国の女流作家特集です。メアリー・シェリーの作品を起点に100年を超える間の作品の変遷が楽しめます。どれもが正統派の怪奇幻想小説の佇まいですね。M・シェリーと言えば「フランケンシュタイン」ですが、このあまりにも有名な作品の系譜を辿る特集もぜひ企画してほしいです。2023/01/30