出版社内容情報
コスミック時代文庫
【目次】
内容説明
「見えない人の心を戯作で表現したい」そんな決意を抱く戯作者の孫娘おけいは、次回作のネタ探しに苦しんでいた。そんな折、版元でおけいの想い人の勘助が、お菓子競べへと誘う。そこで羊羹舟と呼ばれる菓子の型が宙を飛ぶという、とんでもない現場に出くわす。もしかした付喪神かもという弟・幸太郎の言から、羊羹舟に秘められた想いを探ろうとするおけい。やがて、手がかりが加賀にあると知り、関係者を訪ね歩く。そして加賀で一二を争う菓子職人兄弟の葛藤と苦しみに辿り着く。おけいは、増長し上手く話せなくなった幸太郎との関係を振り返りつつも、羊羹舟に込められた持ち主の想いを一気に筆に託した。「人と人との思いやる心」に涙する時代小説の傑作!
著者等紹介
麻宮好[アサミヤコウ]
群馬県生まれ。大学卒業後、会社員を経て、中学入試専門塾で国語の講師を務める。2020年、第一回日本おいしい小説大賞の応募作『月のスープのつくりかた』を改稿して、デビュー。2022年、『恩送り 泥濘の十手』で第一回警察小説新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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ミスランディア本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
121
シリーズの第2弾!羊羹の型が暴れる謎を追う今回、とても良かった。菓子職人の三兄弟それぞれの心情にたどり着く過程が丁寧で、おけいと弟・幸太郎の心の襞も相まって沁みる。ライバル・華絵と切磋琢磨してこれからも真っ直ぐ頑張れって応援したい。カバーイラストの雰囲気が前作と少し変わっているが、イメージはこちらがピッタリな気がする。おけいでなくとも、人の心を言葉にするのは難しいよね。2025/10/01
タイ子
70
戯作者見習のおけい、弟・幸太郎は戯作者の挿絵を描く天才肌の男子。好きな勘助の書店にいつか自分の戯作本が並ぶことを夢見て、いや目指して今日もネタ探し。ある日、おけいはあり得ないものを目撃してしまう。和菓子を乗せた羊羹舟が民衆の中で宙を飛んだ。運悪く老武士が亡くなるという事故。これは戯作になる、おけいの探索が始まる。そこに見えてきたのは兄弟の深い絆と、欲深い商人の邪心。震える羊羹舟に込められた魂の叫びを解き放つことができるのか。文中の言葉が素敵で、おけいと幸太郎の境遇も併せながら展開する物語は胸に響く。2025/10/03
akiᵕ̈
16
戯作者の祖父・茶太郎の元、見習い中のおけいと、祖父の本の挿絵を担当している弟の幸太郎、板元であり、おけいが密かに想いを寄せている勘助、寺の娘・お美緒、岡っ引きの伝三郎と、記憶に残っている面々とまた会えて嬉しい。今作では羊羹舟と呼ばれる菓子型を巡って、そこに隠されていた菓子職人兄弟の過去にあった出来事に触れていく。家族といえど、それぞれ個々に様々な苦悩を抱えているが、著者らしい家族愛、姉弟愛に溢れた、人を思いやる心に胸は震える。心に沁み入る言葉の数々に、読後は晴れやかな青空が広がるよう。2025/09/11




