出版社内容情報
「普通」とはなんでしょうか?
「先生、私、この子を普通にしてほしいんです」
男の子の母親はそう言って、療育セラピストにわが子を預けました。
母親の願い、それは決して特別なものではありません。
ただ、他の子と同じように、わが子に当たり前の幸せをつかんでほしい。
でも、その「当たり前」が時に遠い道のりとなります。
言葉を一つ、また一つと覚えていくたびに、母親の目に喜びの光が宿る。
「ママ」と小さな声で呼ばれた日、
母親は泣き笑いのような表情で男の子を見つめます。
けれど、世間は優しいばかりではありません。
「まだこれだけしかしゃべらないのか」
親族の一言に、母親は深く傷つきました。
小さな手で精一杯頑張る子どもの姿、周囲の期待と現実の間で揺れる親の苦悩、
そして、その両者に寄り添いながら、静かに葛藤する
療育セラピストの日々がここにあります。
この本は、決して特別な物語ではありません。
療育の現場で長く働いてきた著者が綴る、ごく日常の記録です。
「療育」という言葉をまだ知らず、
その世界が遠い話だと感じる人々がいることを著者は知っています。
だからこそ本書を通じて、療育という仕事が
今日も誰かの「普通」を支えていることを伝えたい。
子どもと親、そして療育に携わる人々の、小さな一歩の物語。
あなたの中の「普通」が、少しだけ変わるかもしれません。
【目次】