感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
A.T
20
今年の「日本の戦争読書」はこの一冊。戦後40年も経ってからに、それぞれが平穏な生活を送る元軍曹らのもとに突撃訪問する、元中隊長奥崎謙三62才。そっとフタをしておいてほしい…それが鎮魂だ。現代人として新たな人生を送り、家族や世間に対してカミングアウトのような自らの戦争体験を語りたがらず。奥崎の執拗かつ暴力も伴う訪問に、ついに40年の時を経たニューギニアでの自らの戦犯行為を語り始める… どの人も悲しい。戦争で生き残るも死ぬも悲しい事実が現れる。2024/08/20
gu
7
カメラの後ろで繰り広げられたもう一つの「ゆきゆきて、神軍」。皆が皆戦っている。奥崎という狂人の圧倒的な独善が、しかし一面の真実を突いていて、現在まで残る力を作品に与えているというのが一筋縄ではいかない。2018/09/04
まさやん80
3
映画「ゆきゆきて神軍」の製作ノート。映画自体がぶっ飛んだ傑作だったが、その背景にある奥崎と原監督の葛藤が凄まじい。そのやり取りのいくつかでも拾えていたら、あの映画はもっと凄いものになったかもしれない。それにしても、奥崎という人は怪物だね。 シナリオの採録があったので、それを読むことで映画「ゆきゆきて神軍」を追体験したのだが、凄い映画だと改めて思った。2018/08/31
天切り松
2
撮られる側と撮る側の共犯。神軍平等兵。デジタル時代だとどんな作品になったんだろう。5年の歳月がかかっていたんですね。没収されたニューギニア編はぜひ監督のティーチングで。2020/08/20
kog
2
特徴的な窪眼の不気味な印象のおっさんに、映画を見終わるころには度肝を抜かれ異様な魅力の虜に。徹底的に実直に「神の法」に照らして生きる昭和のアナキストの振り切れ具合。監督曰く、映像は実際の2割しか描かれてないとのことだったが、振り回される監督の私情も交えた本著を読むと同情的になってしまう。元軍曹の人肉食の証言「俺が食われなかったのは人より有用だったから。水のある山をジャングルの出口を見分けることができたから」は「弱肉強食」が隠喩でなくそのものである。生産性で評価する自己責任社会の行き着く先じゃなければよいが2019/08/12
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- 和書
- 受任者の忠実義務