内容説明
「路地=被差別部落」は、いつまでも文学のタブーであってはならない!
目次
部落問題と文学(松本清張;吉野壮児;開高健;杉浦明平;野間宏)
部落の娘(岩野泡鳴)
エタ娘と旗本(ロード・レデスデーレ)
穢多町の娘(吉岡文二郎)
最後の夜明けのために(酒井真右)
化学教室の怪火(横溝正史)
屠殺場見学(川合仁)
特殊部落(杉山清一)
著者等紹介
上原善広[ウエハラヨシヒロ]
1973年、大阪府生まれ。大阪体育大学卒業後、ノンフィクションの取材・執筆を始める。2010年、『日本の路地を歩く』(文藝春秋)で第41回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。2012年、「『最も危険な政治家』橋下徹研究」(「新潮45」)の記事で第18回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あじ
43
この【紙礫シリーズ】は秀逸なタイトルを揃えた異色のアンソロジーで、『路地』は被差別部落に関する短編、清張や開高健が“部落と文学”をお題にした討論の様子を収録している。部落小説を執筆した作家の身の置き場が、窮屈な『路地※部落を指す隠喩』に阻まれている事を察するに余る。初出が古く大正時代にまで遡るものもあり。平成の世だから出現した、暗黙ゆえの饒舌なタブーである。2017/06/04
芋煮うどん
5
知らないこと、たくさん。路地。確かに中上健次以降、文学が生まれていない気がする。知らないでは、すまされないのに。2019/01/08
蛭子戎
5
絶版間違いなしの大変貴重な本。Amazonでは発売と同時に品薄になってたがいまはどうだろうか。タブーとされる被差別部落を扱った文学作品集。文学史の教科書でタイトルしか見たことがない物議を醸した「特殊部落」などが収録されている。この本をまとめた上原氏も言ってるが本当にこれがなんの問題があるのかというくらい差別的ではないしむしろ反差別の良作だった。他にもその騒動を受けての部落文学に関する座談会など兎に角貴重!2017/03/06
田中峰和
4
京都の街中に住んでいると、筆者が路地と呼ぶ地域は近隣の学区ですぐ見つかる。51年にオール・ロマンス誌に掲載された「特殊部落」は、京都駅近くの路地を舞台にした小説だった。ここに転載されている同小説を読んでも、何があれほど激しい糾弾を受けたのか理解に苦しむ。朝鮮人の父と日本人の母をもつ医師と、路地に住む在日朝鮮人の純愛を描いた恋愛小説である。被差別部落民というより、在日朝鮮人が中心の物語だが、タイトルの特殊部落をやり玉に挙げられたのか。地元の親分が図越なのは、会津小鉄会三代目の実名なのでリアル過ぎて怖い。2017/06/14
冨井 丸
1
★4.0一言で言えば、面白かった。昔から「オールロマンス事件」が気になって気になって、問題となった「特殊部落」を読みたくて読みたくて、そしてとうとう念願叶った。これがあんな歴史的大事件になるとは…。その他は自分の大好物の時代よりも古めで物足りなかった。登場人物も美人だったり有力者だったりで取り柄のある人が多かった。被差別部落の住人の中にも差別があり、それがまた人間の業や罪や負を感じさせてほとほと人間が嫌になった。解放同盟の無かった1950年代に「部落ブーム」とやらがあったらしい。片っ端から読んでみたい。2023/10/21